アメリカ・ファーストのトランプ大統領ならそれくらい考えるのはむしろ当たり前だと考えるべきだろう。

■安倍総理の暴走を怖れる韓国

 こうした一連の日米首脳の動きを見て、韓国の国民の間では、トランプ大統領の掌の上で踊らされる安倍総理というイメージとトランプと共謀して韓国に無断で戦争を始めようとしている安倍総理という2つのイメージが広がっているようだ。
どちらにしても、安倍総理は、韓国にとって、トランプ大統領と同じかそれ以上に「危ない」存在だということになる。

 こんな危ない日米両国と一心同体などという選択肢は、韓国にとっては採りえない。

 韓国が、日米から見れば、理不尽にも中国になびいているように見えるのも、単に中国の経済力に擦り寄っているということだけでなく、こうした懸念がなせる業だと見た方が良いのではないだろうか。その意味で、韓国が、韓米日安保協力を3カ国軍事同盟に発展させないと言っているのも、単なる反日の世論対策ではなく、日米の危険な火遊びに対する牽制だと理解すべきだろう。

 日本の嫌韓の人たちの間では、対米、対中のバランスをとりながら立ち回る韓国を馬鹿にしたり憐れむような空気があるが、実は韓国には小国としてのギリギリの知恵がある。現に、米国や日本がいくら怒ったとしても、日米に韓国を見捨てる動きはない。そこを見透かした動きとなっているようにも見えるのだ。

 日本と韓国は、米朝戦争によって、米国よりもはるかに大きな被害を受けるという意味で共通の立場にある。むしろ、日韓がトランプ大統領の暴走を止めて、米国の戦争に巻き込まれないようにする作戦を共同で考えることができると思うのだが。
安倍総理にそんなことを言っても、無駄なことかもしれないが……。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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