だから、これらの番組では企画が毎週コロコロ変わる。定番の企画として定着するものもいくつかあるが、いつまでも続くものは少ない。いわば、新鮮な笑いを生み出し続けるために、あえて自由度の高い番組作りを貫いているのだ。

 ビートたけし、明石家さんまなどが出ていた「オレたちひょうきん族」が終わった後、次の世代の芸人たちがフジテレビのゴールデンタイムで次々と「王道バラエティ」を手がけるようになった。「とんねるずのみなさんのおかげです」「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!」「ダウンタウンのごっつええ感じ」などがその代表例だ。これらの番組が軒並み高視聴率を記録して、フジテレビは全盛期を迎えた。

 さらに、1996年には「SMAP×SMAP」という画期的な「王道バラエティ」も始まった。それまでは芸人が主役だったのに対して、ここでは初めてアイドルが主役になった。SMAPのメンバーは料理を作り、トークをして、歌を歌い、コントまでやってみせた。これを皮切りにSMAPがバラエティに本格的に進出するようになり、アイドルがバラエティに出るというのも一般的になった。

 しかし、「王道バラエティ」は一般的な番組と比べて、作るのに手間がかかる。コントの収録となれば、その度にセットを組み、衣装を用意して、台本も作らなくてはいけない。テレビの現場でもコスト削減が叫ばれるようになり、「王道バラエティ」を新しく立ち上げることはどんどん難しくなっていった。

 そんな中で、2016年には「SMAP×SMAP」が終了した。そして、2018年には「おかげでした」と「めちゃイケ」も終わる。これで「ひょうきん族」以降、脈々と受け継がれてきたフジテレビの「王道バラエティ」の伝統はいったん途絶えることになる。

 2つの番組の終了が発表されたのと同じタイミングで、インターネットテレビのAbemaTVでは元SMAPのメンバー3人が「72時間ホンネテレビ」という72時間ぶっ通しの生番組に出演して話題をさらっていた、というのも象徴的な出来事だった。フジテレビ黄金期を支えた「王道バラエティ」の時代が終わり、地上波テレビを含む動画メディアは次の時代に向けた番組のあり方を模索する時期に入ったのかもしれない。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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