福岡では、ここで3番デスパイネが先制タイムリーを放った。しかしこの日は3球三振。やはり、敵地ではやすやすとホークスのペースにはならないのか……、と思いきや、4番の内川聖一が2球目の118キロのカーブを捕らえ、打球は右翼を超えるタイムリー二塁打。柳田をホームに迎え入れ、3試合連続で初回に先制点をたたき出した。

「デスパイネにここ2試合、助けられていましたからね。でも、デスパが打てないときは僕が頑張らないと。それが流れだし、つながりだと思う」

 それが、4番・内川の仕事でもある。かつて10年間プレーした古巣とのシリーズ対決に「僕にとっては、それはどうでもいいこと。お互い、日本一を争うのにふさわしい試合ができればいいだけ」。感傷に一切ひたらないのは、王者・ソフトバンクの主将を背負うプライドでもある。7月下旬に左手親指付け根を骨折し、約2カ月の戦線離脱。リーグ優勝に貢献できなかった後悔の念は「日本シリーズで恩返し」という強いリベンジの思いとなり、ひいてはシリーズを戦う大きなモチベーションにもなっている。その主将がたたき出した初回の1点が、DeNAの戦いぶりに焦りを生み、リズムを狂わせた。

 DeNAは1回、先頭の桑原将志が四球で出塁した。2番・梶谷隆幸は今季0犠打。典型的な攻撃型2番に、送りバントはない。桑原は2球目に二盗を試みるも、あえなくアウト。さらに、四球を選んだ梶谷も4番・筒香嘉智の初球に二盗失敗。ソフトバンクよりもさらに積極的に動きながら、すべてが裏目に出ての無得点となった。スムーズな攻撃で先制したソフトバンクと、ちぐはぐなDeNA。初回の攻防から明暗が浮き彫りになってしまった。

 DeNAは1点を追う2回、先頭の筒香が四球で出塁。大事にしたい走者のはずが、続く宮崎敏郎は二ゴロ併殺。一方、ソフトバンクは4回1死一、三塁から、8番の高谷裕亮が3球目にスクイズを敢行もファウル。続く4球目に一走・明石健志が二盗を決め、一塁が空いた。高谷の後に続く9番は投手の武田翔太。カウント2-2とはいえ、四球で歩かされてもおかしくない場面となった。ところがDeNAは勝負を選択し、5球目は外角へ148キロ直球。これを高谷が中前へ運び、2点適時打となった。35歳のベテラン捕手がスクイズを失敗しても打って挽回する執念を見せつけた。

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