ソフトバンクは1点差に追い上げられた直後の7回には、攻撃に入る前に三塁側ベンチ前で円陣を組んだ。輪の中心にいたのは、主将の内川だ。

「何とか点を取りたかったし、残り3イニングでもう一度頑張ろうと」

 勝利への執念を見せつけるソフトバンクと、追い詰められているはずなのにどこか淡泊なDeNA。チームカラーの違いと言えばそれまでだが、随所で見せる野球の“質”があまりにも違っていた。7人の継投で1点差を守り抜いたソフトバンクが3連勝。2年ぶりの日本一に早々と王手をかけた。

 「ここまでみんなで頑張ってきたので、一気に行けるように。4戦目も、全員でフルスロットルで初回から行きたいですね」と工藤監督。過去67度の日本シリーズで、引き分けを挟まない、開幕から無傷も4連勝で日本一に輝いたのは5度だけ。大偉業とも言える“4タテ”は、シーズン94勝を挙げ、圧倒的強さを見せた2017年のソフトバンクには実にふさわしいフィニッシュだろう。「日本一に近づいたのは確かです。でも、本当に勝つまでは最後まで全力」と内川。絶対に4連勝で終わる。もう、横浜で決める――。

 戦いぶり、その勢い、そして勝利への執念。どれを見ても、ソフトバンクがDeNAに劣る点はない。大願成就は、まさしく目の前にある。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。