それなのに政治家はどうだろうか。

 震災をめぐり「東北でよかった」と今村雅弘復興相(当時)が言い放ったのは今年4月だ。政治家の問題発言には慣れっこになりつつある私も、このときばかりは「許せない。絶対に許せない」とニュース画面に口走り、奥歯をキリキリとかみしめた。

「閣僚全員が復興大臣」と繰り返してきた安倍晋三首相は25日、記者会見を開いた。衆院の解散を表明し、その理由を語るなかで、震災や原発事故に触れる場面はなかった。野党も野党で、このタイミングの解散に対する批判に終始。その後は新党をめぐるごたごたばかり続いている。

 これに先立ち、永田町にはにわかに解散風が吹き荒れた。政治生命がかかる議員たちが右往左往するのはわかるが、もっと気にしなければならない「風」があるはずだ。

 風評、風化は福島の人びとの暮らし、ときには命にもかかわる。それをどうすべきだと考えているのか。互いに訴え、被災者に希望を抱かせる選挙戦にしてほしい。

 最後に個人的な思い出をつけ加えると、「郡山のSMAP」が載った新聞が配られたのは昨年1月15日だ。昼間になり、職場のアシスタントから1通の封筒を渡された。前年受けた人間ドックの結果で、中を見ると「要 精密検査」とあった。

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野上祐

野上祐

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

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