次にパ・リーグだが、投手では二人の『石川』がブレイクの兆しがある。一人目はソフトバンクの石川柊太(4年目・支配下登録2年目)だ。創価大では1学年上に絶対的エースだった小川泰弘(ヤクルト)がいたこともあり、主戦となったのは4年から。その年に出場した全日本大学野球選手権では初戦で四国学院大を相手に完封勝利をおさめているが、当時は大きな体を持て余している印象が強く、ドラフトでも育成選手としての指名だった。プロ入り後も最初の2年間は二軍での登板すらなかったが、体作りが進んだことでコンスタントに150km台をマークするまでに成長。昨年7月に支配下登録されると、今年は開幕から一軍に定着し交流戦では先発で2勝をマークしている。もうひとりは日本ハムの石川直也(3年目)だ。山形中央高では2年春、3年夏に甲子園に出場。当時から140km台後半の角度のあるストレートは威力があったが、安定感には欠けドラフト4位でのプロ入りとなった。プロでも時間のかかるタイプに見えたが、抜擢の早い日本ハムで1年目から二軍で経験を積むと2年目の昨年にはプロ初登板を記録。今年は開幕一軍を勝ち取り、中継ぎで21回1/3を投げて21奪三振と存在感を見せている。 


 
 一方の野手ではオリックスの武田健吾(5年目)の成長が著しい。自由ケ丘高では甲子園出場経験こそないものの、三拍子揃った大型外野手として評判でドラフト4位でプロ入りを果たした。プロ入り後も1年目から二軍のレギュラーに定着し、昨年はオフに行われたU-23のW杯でベストナインに輝くなど順調に成長している。そして今シーズンはFAで移籍した糸井嘉男(阪神)の抜けた外野の一角を奪い、交流戦では打率3位と見事な活躍だ。ちなみに過去の受賞者で入団から最も年数を経過していたのは関本四十四(巨人・71年)と小関竜也(西武・98年)の4年。もし武田が受賞すればこの二人を抜いて最長記録となる。 
 
 当然だがルーキーの選手にとって長いレギュラーシーズンを戦うのは初めての経験である。これから梅雨、夏場とコンディションを維持するのが難しい時期に入り、調子を落とすことも往々にして考えられる。そうなるとここで挙げた選手たちにもチャンスは十分にあると言えるだろう。昨年のように最後までハイレベルな新人王争いを期待したい。(文・西尾典文)
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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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