ナダル(左)とフェデラー(右)、彼らはなぜ復活できたのか(写真:Getty Images)
ナダル(左)とフェデラー(右)、彼らはなぜ復活できたのか(写真:Getty Images)

 1位、ラファエル・ナダル。2位、ロジャー・フェデラー──これは現時点での、今季の獲得ポイントレースの順位である。あるいはこれを“今季の勝率”に置き換えれば、順位は入れ替わる。2017年シーズンの折り返しに差し掛かり、4大大会のうち2大会を終えた時点で、全豪はフェデラー、全仏はナダルが制した。

 また、ATPマスターズ1000の5大会のうち、3月から4月に行われたハードコート2大会はいずれもフェデラーが制し、4月から5月のクレーコート3大会のうち2大会ではナダルがトロフィーを抱いている。昨年は揃ってケガに苦しめられ、もはやグランドスラムで優勝するのは難しいだろうと見られていた。そのふたりの“生きるレジェンド”が、今季再びテニス界を支配している。

 1月の全豪オープン決勝がフェデラー対ナダルのカードになった時、人々は「まるで時計の針が巻き戻ったようだ」と感傷的な気分に浸った。両雄によるグランドスラム決勝が2011年の全仏以来となれば、それも当然の反応だったかもしれない。しかしその後のプレーと戦績を見れば、時計の針が確実に進む中で、ふたりはいずれも変化していることが伺える。

「世界のテニスは日々進化している。だからお前も、変わらなくてはいけない」

 ナダルの叔父でありコーチでもあるトニー・ナダルは、昨年末、甥にそう発破を掛けたという。

「もっと全ての試合で闘争心を燃やせ。顔つきから変えるんだ!」

 親族だからこそ口にできる厳しい言葉を掛け、徹底的に追い込んだオフシーズン。ただ、その練習の中心は、新たな技を体得するというより、最大の武器であるフォアハンドに一層の研鑽を積むことだったという。

 今季からナダルのコーチングスタッフに加わった、元世界1位のカルロス・モヤは言った。

「彼は既に史上最高の選手の一人だが、まだまだ勝ちたがっている。成長こそが彼のモチベーションであり、30歳を過ぎても日々練習すれば上達できることを知っている。だからこそ、彼は最高の選手なんだ」

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