「ロールモデル」という言葉でアスリートや有名人を表すことがある。主に子どもたちの目標や憧れとなる者を指し、具体的な行動などを真似される人物のことだ。

 宮里には、まさにこの「ロールモデル」という言葉がピッタリと当てはまる。コースでの振る舞い、メディアやファンへの対応、ゴルフに対する姿勢。彼女の行為、行動は、プロゴルファーを目指す少年少女たちの手本となり、憧れとなっているのだ。

 昨年、日本女子オープンを17歳で制した畑岡奈紗は、米ツアーでプレーするきっかけは宮里であると話し、15歳293日の若さでツアーを制した勝みなみは、宮里と初対面した時のことを緊張で覚えていないと振り返るほどだという。

 またツアーの人気のバロメーターともなる試合数は、宮里がツアー初優勝を飾った03年が30試合だったのに対し、今年は38試合と変動しながらも8試合の純増。賞金総額も今年は37億1500万円で、これは5年連続で過去最高額を更新している。これは、宮里をロールモデルとして育ったジュニアが女子プロになり、ツアーの人気を支えているからに他ならない。つまり、宮里がまいた「種」が、開花したということだ。

 そして、話は戻り今回のサントリーレディスオープン。最終日のラウンドを終えた宮里に話を聞いていたアナウンサーが、突然、インタビュー中に言葉に詰まる場面があった。そのアナウンサーは、宮里が女子高生プロとなってから、ツアーを代表するプロに、世界一のプロになるまで、そして今回の引退という決断に至るまでの過程を思い出したのだろう。涙の後に思わず「ありがとう」と発していた。

 宮里も目に涙をためていたが、インタビュアーが引退試合でもないのに感極まることはなかなかないこと。いかに、宮里が現場でも愛されていたかということがわかるシーンであり、彼女が、女子プロゴルファーとしてだけでなく、ロールモデルとして、一人の女性として慕われていることが垣間見られる場面だった。

 さて、そんな宮里はこの後、主戦場の米ツアーでラストシーズンを過ごすことになる。宮里が女子プロゴルファーとして最後にやり残したこと、それは海外メジャー制覇だろう。記者会見では「最後に勝って終わりたい」と語った。残されたチャンスは最大4試合。周囲から目標にされてきた宮里の目標を、是が非でも叶えて欲しいと、心から思う。(文・田村一人)