世界選手権・フリーの223.20という新たな世界最高得点は、羽生の総合力を示すものだ。世界選手権ではショートで首位に立ちながらフリーで崩れ、4位に終わった前世界王者ハビエル・フェルナンデスは「もし、彼がショートもロング(フリー)もミスなくこなしたら、思うに彼は無敵だね」とコメントしたという。


 世界選手権で、羽生に次いで2位だった宇野昌磨も、平昌五輪の金メダルの可能性をみせた。自己最高得点を更新した合計の得点は、羽生にわずか2.28差に迫る319.31。フリーで先に滑った羽生の完璧な演技を見て、「どんな演技をしても勝てない」と感じたという宇野は、開き直って銀メダル獲得につながる演技で観客を沸かせた。4回転については、トゥループ、フリップ、今季習得したループに加え、新たにルッツにも挑戦する意欲に燃えている。その急速な成長ぶりは目覚ましく、羽生に「重圧があります」と言わしめた。

 平昌五輪での金メダルの行方を最終的に決めるのは、メンタルの強さだろう。今季の集大成となる大舞台でショート5位発進と出遅れながら、フリーを完璧に滑って勝った羽生は、心も強い。多くの4回転を入れなければ勝負できない男子では、高難度のプログラムをミスなく滑り切った選手が勝つ。五輪の舞台で頂点に立つのは、自分を信じることができるスケーターではないだろうか。(文・沢田聡子)