3月26日に催された『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』『惑わない星(2巻)』発売記念トークショー
3月26日に催された『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』『惑わない星(2巻)』発売記念トークショー
出された「お題」の菌をその場で描く石川雅之氏
出された「お題」の菌をその場で描く石川雅之氏
岩田氏と石川氏のサインや、『惑わない星』関連グッズが当選する抽選会など、会場は盛り上がった
岩田氏と石川氏のサインや、『惑わない星』関連グッズが当選する抽選会など、会場は盛り上がった

 医師・岩田健太郎氏と、累計発行部数800万部のマンガ「もやしもん」や最新作「惑わない星」の作者・石川雅之氏がブックファースト新宿店でトークショーを開催した。タッグを組んだ単行本『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』(朝日新聞出版)で、「医師×マンガ家」という異色のコラボが話題を集めているこの二人。イベントでは、石川氏が描いたイラストを来場者にプレゼントするなど、会場は大いに盛り上がった。そのトークショーの一部を再現する。

■画集として見るだけでも価値アリ

――石川雅之さんの「マンガ家」という仕事は知っている人も多いと思いますが、岩田健太郎先生の「感染症屋」については、あまり馴染みがないかもしれません。

岩田健太郎:まず感染症の説明からしましょう。目に見えない微生物が体に入って、病気を起こすのが感染症です。たとえば風邪もインフルエンザも感染症。リオ五輪で話題になった「ジカ熱」、あと「B型肝炎」や「エイズ」なんかもみんな感染症です。それをひっくるめて全部取り扱うのが「感染症屋」、つまり、僕の仕事ということになります。

――『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』(以下、『菌辞典』)は、医療従事者向けの月刊誌「メディカル朝日」の連載に書き下ろしを加えたものです。同誌は2016年の11月号で休刊となりましたが、連載は11年1月号から休刊までの約6年間続きました。書籍化が決まったときの心境は?

岩田:いや~、書籍化が決まってよかったなと思いました。表紙の僕の絵はだいぶ美化されていると思いましたけど(笑)。医師向けに書いているので、一般読者を完全に突き放した感じの文章なんですね。でも、絵は非常にわかりやすいですし、カラーでとってもきれいなので、文を無視して画集として見るだけでも買ってよかったと思っていただける内容だと思います。そういう読みかたをしてもらってもいいと思います。

石川雅之:僕は医療の知識がまったくないので、お医者さんが見たら「なんだこの絵は」という本になっていると思います。お医者さんは文章を読んでいただいて、絵は見なくてもだいじょうぶという、さきほどの岩田先生と真逆ですね。連載がまだまだ続くと思っていたんですが「メディカル朝日」がなくなっちゃって。編集担当さんから「2カ月後に休刊になるけど、まだナイショで頑張ってください」みたいな手紙がきて、「どんなモチベーションで描けばいいんだろう。打ち切りって、こういう気分かな」と感じてました(笑)。

■ぶっちゃけ「便乗商法」!?

――『菌辞典』の連載開始時、石川先生にイラストを描いてもらうことになったのは、岩田先生の提案だったそうですが。

岩田:「もやしもん」が、ものすごくおもしろくて、これはいいなと思って読んでいたんです。病気の原因になる菌、これを勉強する分野を「微生物学」って言うのですが、これは医学生の間で一番人気がない科目なんです。暗記ばっかり。菌の名前をひたすら覚えて、試験をやって、忘れる、みたいなイメージ。極めて無味乾燥でつまらない科目と思われているんです(笑)。

 単に菌の説明をする連載ではつまんない内容になるだろうなと思って、もうひと工夫が欲しかったんです。もちろん文章の工夫も必要ですが、菌が見えるという画期的なコンセプトで描かれたマンガがせっかく存在するわけですから、「ダメもとで人気のマンガ家さんにお願いしてみませんか」と編集部に脅しをかけたら、実現しました。そもそも「もやしもん」は人気があったので、ぶっちゃけ「便乗商法」でもありましたよね(笑)。

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