「残念ながら、まだまだ海外と日本で行われているフットボールには歴然とした差がある。特にフィジカルの面においてだ。15人ほど海外組がいて、先発で出ていない選手もいる。普通の基準なら呼べないが、川島、長友、吉田、長谷部、香川、清武、本田、岡崎、宇佐美、武藤嘉……彼らを除いてしまったら、誰を交代で入れるのか、かなり難しい。だから、このような選択は私にはできない」

 なぜ、ハリルホジッチ監督は試合に出られないにもかかわらず、海外組のベテランを重用するのか。その理由をハリルホジッチ監督やアギーレ元監督を招聘した霜田正浩・元技術委員長は次のように語った。

「海外クラブのレギュラーというのは、あくまで(代表に選出される)大筋のガイドライン。これが基本ですが、経験やメンタルの強さを持っていれば、関係ありません。本田や長友はすでに資格を持っているのです。このチームはロシアW杯で強豪に勝つことから逆算してスタートしています。そして、相手が強くなれば強くなるほど引き出しも必要になります。長友や本田だけでなく、岡崎も川島もポッと出しても、起用に応えるだけの経験があります。このため本田は、スタメンでなくとも、日本代表メンバーの23人には必要な選手なのです」

 ハリルホジッチ監督は「海外と日本のフットボールには歴然とした差がある」と言った。それは本田の置かれている状況を見るのが一番わかりやすい。活躍しなければメディアからボロクソに叩かれるし、数試合スタメンから外れただけで「移籍リスト」に載ったと報じられる。本田に限らず海外組の選手は、結果を出さないとクビになる危機感と常に戦いながら日々のシーズンを送っている。

 翻って国内組の選手、代表クラスや元代表クラスの選手は、ケガでもしない限りレギュラーが保障されている。ミスをしたり、ぶざまな試合で負けたら、試合直後こそブーイングを浴びるものの、それが何日もメディアの俎上に載り、叩かれることはない。サッカーが日本ではまだ根づいていないのと、国民性の違いもあるのだろう。

 もういいかげん、「本田不要論」はやめた方がいい。これほど不毛な議論はないからだ。にもかかわらず、メディアが取り上げるのは、本田がいまだに「日本代表のエース」であり、本田でないとサッカーファンの興味を引くことができないからかもしれない。(サッカージャーナリスト・六川亨)