後藤直紀(ごとう・なおき)/東京の老舗「バッハコーヒー」(カフェバッハ)で田口護氏に3年間師事し、焙煎理論・技術を中心に、素材や製品の検証技術、抽出の基礎理論、店舗運営やサービスの基本、コーヒーマンとしての心構えを学ぶ。2008年6月に福岡県大野城市に「豆香洞コーヒー」をオープン。2012年に「ジャパンコーヒーロースティングチャレンジ」で優勝、続く13年に焙煎世界大会(World Coffee Roasting Championship)で優勝を果たし、現時点では国内唯一の世界チャンピオン(撮影/佐藤渉)
後藤直紀(ごとう・なおき)/東京の老舗「バッハコーヒー」(カフェバッハ)で田口護氏に3年間師事し、焙煎理論・技術を中心に、素材や製品の検証技術、抽出の基礎理論、店舗運営やサービスの基本、コーヒーマンとしての心構えを学ぶ。2008年6月に福岡県大野城市に「豆香洞コーヒー」をオープン。2012年に「ジャパンコーヒーロースティングチャレンジ」で優勝、続く13年に焙煎世界大会(World Coffee Roasting Championship)で優勝を果たし、現時点では国内唯一の世界チャンピオン(撮影/佐藤渉)
プロファイル作成は、生豆を焙煎し、その豆を挽いて抽出し、カッピングで味と香りを確認するという作業の繰り返し。一つのプロファイル作成に3日を要することもある。集中力が必要な作業で、終わると空腹を感じるのだという(撮影/佐藤渉)
プロファイル作成は、生豆を焙煎し、その豆を挽いて抽出し、カッピングで味と香りを確認するという作業の繰り返し。一つのプロファイル作成に3日を要することもある。集中力が必要な作業で、終わると空腹を感じるのだという(撮影/佐藤渉)
専用のアプリを立ち上げて、生豆に記載されているQRコードからプロファイルをダウンロード。そして豆をセットするだけの簡単操作。数分もすれば、焙煎のいい香りが立ちのぼり始める
専用のアプリを立ち上げて、生豆に記載されているQRコードからプロファイルをダウンロード。そして豆をセットするだけの簡単操作。数分もすれば、焙煎のいい香りが立ちのぼり始める

 日本のコーヒー消費量は、年々増加傾向にある。全日本コーヒー協会統計資料によると、2016年時点の国内消費量は47万トンと、4年連続で最高記録を更新。家庭での飲用杯数も増えており、メーカー側もその動きに追随している。

「無印良品」を展開する良品計画は、全自動コーヒーメーカーの新製品「豆から挽けるコーヒーメーカー」を2月に発売。またエスプレッソマシンに定評のあるデロンギ・ジャパンは、全自動コーヒーマシンのフラグシップモデルを3月に発売。家庭でのコーヒー需要に応える、本格志向の新製品を続々と投入してきている。

 そんな中、抽出だけでなく焙煎(ばいせん)までを家庭でできる製品も登場。4月13日よりサービス開始となるパナソニック株式会社の新サービス「The Roast」(ザ・ロースト)だ。

「The Roast」は、卓上の焙煎機と、専用のコーヒー豆を月に一度、さらにその豆にあった焙煎プロファイルを一緒に届けるという世界初のサービスだ。

 焙煎機の開発アドバイスから焙煎プロファイルの作成までを担当したのは、日本屈指の焙煎士・後藤直紀氏。2008年6月に福岡県大野城市に「豆香洞(とうかどう)コーヒー」をオープンした後藤氏は、13年に焙煎世界大会(World Coffee Roasting Championship)で優勝(現時点では国内唯一の世界チャンピオン)。「The Roast」の持つ性能を引き出し、「おうちで極上」の焙煎体験・コーヒー体験を可能にしているのは、後藤氏のなせる技と言える。

 そこで今回、福岡県にある後藤氏の焙煎所を訪問。「The Roast」に込めたこだわりと、その先にある想いについて、聞いてきた。

■生豆の特性に合わせた100種類以上の焙煎プロファイルを作成

「最初に話を聞いた時、ついにこの時代が来たか、と思いましたね。家電メーカーが本気になって、家庭用焙煎機の製造に乗り出してきたんだなと」(後藤氏)

 後藤氏はパナソニック側から、このプロジェクトの相談を受けた時に、そんな思いにかられたという。世界を制したワールドクラスの焙煎士を驚かせたのは「焙煎機」+「生豆」+「焙煎プロファイル」を三位一体で提供するサービス構造だ。

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