しかし、松山がここまでのゴルファーに成長したのは、それ以上に冷静にフィールドを見られるメンタルにあるのではないだろうか。

 それは、舞台に応じて勝ち方を心得てきたということ。圧勝した三井住友VISA太平洋マスターズで松山は、「1日ハマれば接戦でも勝てるとわかった」と国内ツアーを分析。それに対して主戦場のPGAツアーを「3日間ハマらないと勝てない」とした。

 プロトーナメントは4日間の長丁場だ。72ホール、毎ショット、毎パットに全力で集中し続けるのは無理がある。ストロークプレーのゴルフは基本的にコースとの勝負になるが、大会のレベルやフィールドの厚さによって、集中するところ、力を抜くところを理解していれば、それだけ気持ちにゆとりを持ってプレーができる。勝負どころが分かれば、有利なゲーム運びができるのだ。

 さて2017年、気の早い私たちはどうしても、ここまで上り詰めてきた松山に日本男子初のメジャー制覇を期待してしまう。「今の調子はマスターズまで続くのか?」「ピークをメジャーに合わせるべきだ」と余計なお世話を焼いてしまうのだ。

 しかし、当の松山はいたって冷静。海外メジャーについて質問を受けるとこんな答えが返ってきた。

「勝つことが目標。でも、そこだけ見て空回りしないように」

 長いツアーというフィールドの中で、メジャーはそのうちの1試合に過ぎない。大舞台では、勝利への情熱は持っても冷静沈着に―。松山にこの落ち着きがある限り、日本ゴルフ界の悲願が2017年に成就する可能性は十分だ。(文・田村一人)