現在、都内に住んでいるその男性は20代半ばの時にギャンブル依存症を患っている。当時、派遣切りで無職になった男性は、何げなく始めたネットカジノで大勝。3万円が70万円になった。働いていたころは月給20万円程度だったが、わずか数時間でその3倍以上を稼ぎ出し、ギャンブルは「簡単にもうかる」と感じた。

 その後行ったパチスロでも勝ち、「これで食べていける」と思った男性は、毎日パチスロに通うようになる。当時は両親とともに実家に暮らしていたが、仕事もせずにパチスロに通う男性は、実家から追い出され、ネットカフェで生活するように。パチスロ店に通い始めた当初は、店を出てからもパチスロ店の騒がしい音が脳裏に流れ続け、毎晩耳鳴りがする中で眠りについた。それでも毎朝9時にパチスロ店の前に並び、夜22時まで打ち続け、月間20万円程度を稼ぎだしたという。

 しかし、パチスロによる不安定な収入は3カ月ほどで底をつく。ネットカフェの代金はもちろん、食費も、家に帰るための電車賃もなくなった男性は、追い詰められて入水自殺を図ってしまう。幸い自殺は未遂に終わり、一命をとりとめた男性は両親のいる実家で再び暮らし始める。しかし、同居はわずか1週間で終了。男性は母親から結婚記念日を聞き出すと、その数字をもとに暗証番号を割り出し、両親の通帳から20万円を下ろして持ち逃げする。当時の心境を「両親と一緒にいるのがいたたまれなかったのと、ギャンブルをやりたいという欲求が、半分半分だった」と振り返る。

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