鹿島の石井監督(左)とFW金崎(右)(写真:Getty Images)
鹿島の石井監督(左)とFW金崎(右)(写真:Getty Images)

 「悔しいです。本当に悔しいです。あのレアル・マドリー(スペイン)に対して相手を苦しめることはできたと思うんですね。本当にちょっとしたポジショニングだったり、判断ミス、そういうところで失点してしまったので、悔しい思いでいっぱいです」

 延長戦の末に2―4で敗れた18日のクラブW杯ファイナルの後、鹿島アントラーズの石井正忠監督はダイレクトに悔しさを表した。それまでの質問には手応えも感じさせる回答を発していたが、「称賛の言葉ばかりだが、正直悔しかったか?」という質問に、普段は冷静な指揮官も感情的な口調になっていたのだ。

 現役時代に草創期の鹿島を支えた指揮官は昨年7月に就任。勝利にこだわる鹿島の伝統を守りつつ、コンパクトにプレッシャーをかける守備スタイルを植え付けるなど、“常勝軍団”の復権を目指してきた。昨年10月にはナビスコ杯(現・ルヴァン杯)に優勝し、今季はJ1の1stステージを制した。

 「チームの一体感が薄れていたことを悩んでいた」という石井監督は8月末に体調不良で一時チームを離れたが、復帰後は再びチームの結束をうながし、J1のリーグタイトルとなるチャンピオンシップ優勝に導いた。石井監督の方針は事前の情報をしっかり与えながら試合の中では選手の判断を尊重することだ。

 クラブW杯準決勝のアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)戦も前半はかなり苦しい対応を強いられたが、石井監督は「ゲーム中に選手たちがベンチや監督の方を見て指示をあおぐのではなく、選手間でしっかり判断できるチームなので、そこで慌てないでできた」と振り返る様に、まずは選手を信頼して見守り、後半の選手交代で自分たちの流れを呼び込んだ。

 その選手交代に関しても、奇をてらった様な“マジック”は無い。その代わりに選手の特徴や適材適所に基づく明確な効果を想定し、信頼して送り出す。おそらく投入される選手だけでなく、すでに出ている選手たちも誰が入ったらどういう効果が期待でき、どう生かすべきかを共有している様子だ。

 チャンピオンシップでエースの金崎夢生が右足首を負傷し、大会直前の練習で別メニューだった。結局オークランド・シティ(ニュージーランド)との開幕戦はベンチスタートとなったが、後半の立ち上がりに先制されると赤崎秀平に続き金崎を投入。前線に勢いを注入し、赤崎と金崎のゴールで逆転につなげた。

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