「アプリの統計から、劇場版公開前のファンは繰り返し訪れている人が非常に多いことがわかっています。これが、公開後になると明らかに新規のユーザーが増えました。特に今回のあんこう祭では、初めて大洗町を訪れたユーザーが3割程度いたイメージがあります」

 7割のリピーターに対し新規3割。あんこう祭来場者数の増え方を見ても、これは遠くない数字だと言えるだろう。やはり、劇場版公開によって新規ファンの獲得に成功していることは間違いなさそうだ。しかし、劇場版「ガルパン」はTV版の続編という位置づけであり、新規ファン獲得を目指した作品には見えない。にもかかわらず、なぜ新規ファンの獲得に至っているのか。

 アニメを使った地域振興に詳しい、北海道大学観光学高等研究センターの山村高淑教授はこう分析する。

「実は『君の名は。』大ヒットの動向から、テレビアニメと劇場アニメでファン層が異なることがわかってきています。最近のテレビアニメは深夜にやることが多く、コア層が多いのですが、劇場アニメはライトな層にも訴える力があるようです」

 「ガルパン」もこの例に漏れず、深夜アニメとして放送されていた。テレビアニメからのファンは“オタク”と言えるような人が多く、何度も大洗を「巡礼」する人も少なくなかった。だが、劇場版によって、オタクほどではないライトな層もあんこう祭を訪れるようになり、あの混雑となったようだ。また、山村教授は今年に入り、アニメの舞台を旅する「聖地巡礼」そのものが変わってきているとも話す。

「『君の名は。』のヒットもあり、これまでコア層中心だった『聖地巡礼』がライトな層にも広がってきているのではないでしょうか。最近はデートや家族連れで『聖地』を旅する人も増えてきているようです。舞台となった地元側からすると、こうしたライト層をいかにリピーターにしていくかが今後の腕の見せどころとなるでしょう」

 「君の名は。」のヒットがガルパン人気をさらに加速させた……ふたつの大ヒットアニメに“意外なつながり”があったようだ。(ライター・河嶌太郎)