「聖地」大洗に集結したガルパンファン
「聖地」大洗に集結したガルパンファン

 東京から電車に揺られること約1時間半、やっとこさ水戸駅の改札を出ると、駅の外のかなたまで行列が続いていた――これは「大洗あんこう祭」(あんこう祭)が開催された、11月13日朝の光景だ。会場のある大洗に行くには水戸駅で鹿島臨海鉄道に乗り換えるのだが、これが最大4両編成のためさばき切れず、長蛇の列ができてしまっていたのだ。

【写真】“ガルパン”の聖地「大洗」にファン殺到!

 あんこう祭は、毎年11月に茨城県大洗町で開かれるお祭りで、冬が旬の魚・アンコウの味覚を堪能することを趣としている。だが一方で、2013年から大洗町を舞台にしたアニメ「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)とのコラボが続いており、この日集まった人の多くはアンコウより「ガルパン」を堪能するために訪れたとみられる。主会場となった大洗港中央公園のステージでは、午前11時半から「ガルパン」の声優陣と監督によるトークショーも催され、この時が混雑のピークとなった。主会場以外の商店街などでは、「ガルパン」グッズの販売や、キャラクターを車体にペイントした「痛車」の展示もあったが、そこでも混雑は変わらず、前に進むのも難しい状況だった。

 公式発表によると、あんこう祭はこの日13万人が訪れたという。大洗町の人口は約1万7000人で、実に約8倍もの人が1日で訪れたことになる。

 もともとは、こんなに人を集めるお祭りではなかったようだ。大洗町役場商工観光課の平沼健一さんはこう振り返る。

「震災前の10年までは、毎年4万人程度を集める地域のお祭りに過ぎませんでした。それが東日本大震災の起きた11年には3万人まで落ち込んでしまいました」

 お祭りの顔であったアンコウは海底魚であったため、福島第一原発事故による風評被害を強く受けたという。だが、12年10月に「ガルパン」が放送されるとその状況は一変する。

「放送から1カ月後の12年は6万人に倍増、放送が終了した13年は10万人に増え、去年は11万人にまで増えました。さらに、今年は13万人に伸びました」(平沼さん)

 TVアニメ放送終了から4年が過ぎようとしているが、「ガルパン」人気は衰えるどころか、台風のようにその勢力を広げつつある。なぜ、今年のあんこう祭は大混雑となったのか、関係者は口を揃えて昨年11月に放映された劇場版「ガルパン」を理由に挙げた。当日お祭りの運営側にまわっていた、大洗まいわい市場代表の常盤良彦さんはこう話す。

「劇場版ガルパンの出来が素晴らしかった、まずはこれに尽きるでしょう。劇場版公開以降ファン層に変化が訪れ、女性や家族連れで大洗を訪れる人が増えました。劇場版スタッフの地道な広報活動が実を結び、ファンのすそ野が広がったのではと考えております」

 TV版では男性中心だったファン層が、劇場版公開によって変化したというのだ。スマートフォン向け聖地巡礼支援アプリ「舞台めぐり」を開発・運営し、当日出展していた安彦剛志さんもこう話す。

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