淡路島のマダコを1匹丸ごとプレスした「たこ姿焼」
淡路島のマダコを1匹丸ごとプレスした「たこ姿焼」
マダコを開くと、人の頭ほどの大きさになる
マダコを開くと、人の頭ほどの大きさになる
姿焼を考案した高田さん(右)と娘むこで「やま高」の店長、市吉さん
姿焼を考案した高田さん(右)と娘むこで「やま高」の店長、市吉さん
「タコ焼きまーす」 焼く前に大きさを確認してもらう
「タコ焼きまーす」 焼く前に大きさを確認してもらう

「タコ焼きまーす」

【たこ姿焼の焼きあがる姿はこちら】

 広げると人の頭ぐらいの大きさになる約500グラムのマダコを、温度を約160度まで上げたプレス機で挟んで押しつぶす。しばらくすると煙が出始め、タコがじゅわ~っと焼けていくなんとも良いにおいが立ち込める。待つこと約3分半、プレス機を開けると、こんがりと焼けたタコが姿を現した。

 淡路島の名産は、うにしゃぶやタマネギだけじゃない。タコもある。兵庫県淡路市の道の駅、東浦ターミナルパーク内の「やま高」では、淡路島沖で取れたマダコを、丸ごと1匹プレスした「たこ姿焼」が味わえる。住民や島を訪れる人たちに人気で、2014年には、兵庫県内の道の駅の人気グルメ13点で競う人気投票で1位に選ばれた。

 1枚1080円(税込み)。注文すると、店長の市吉和人さん(44)らスタッフが、すぐに焼いてくれる。焼いたタコは、そのままでも、足を1本ずつ切ってもらってもよい。焼きたての足をぱくりといってみた。

 長さ20センチ以上と見た目はたくましい足なのだが、意外と柔らかい。かむたびにタコのジューシーなうま味が口の中に広がる。一味が入っているためピリッと辛い。これは、お酒に合いそう!

 喜々として味わっていると、平日にもかかわらず、次々と客がやって来た。お店の外からも、ガラス越しに興味深そうな視線が集まる。市吉さんによると、週末や祝日は、午前8時半から午後6時までほぼ休みなしで焼きっぱなし、6台あるプレス機はフル稼働だという。リピーターも多く、近場では神戸や姫路、大阪から、遠方では北海道から訪れる人もいるそうだ。

 神奈川・江の島でもイイダコ2、3匹を丸ごとプレスした名物、たこせんべいがあるが、やま高のたこ姿焼はマダコを丸ごと1匹。見た目も味もインパクトがある姿焼は、どのようにして生まれたのだろうか。

 アイデアが生まれたのは、20年以上前のこと。考案したのは、市吉さんの義理の母、淡路市で酒店を営む高田佐登美さん(68)だ。高田さんは、かねて「おいしい酒には、おいしいあて(おつまみ)を」と、タコやイカナゴといった島の海産物を使ったおつまみを作りたいと考えていた。1994年には、高田さんもかかわり、淡路島の米や水で作った地酒「千夢酔」の醸造も始まった。

次のページ