【回答】


 ほとんどの高齢者が、「住み慣れた自宅で最期まで暮らしたい」と思っています。ご両親にとって、元気なうちに老人ホームに居を移すという選択をすることは、一大決心だったはずです。

 つい「いつまでも親は元気」と思いがちですが、80代といえば、いつ何があってもおかしくありません。そうなったとき、娘のあなたに介護の負担を負わせたくないという思いが根底にあるのではないでしょうか。入居するにはまだ早いと思われるかもしれませんが、健康だからこそ新しい環境になじむことができるのです。また、要介護状態になってからでは、夫婦一緒に生活できるホームを探すのは至難の業です。

 なぜ親のホーム入居がそんなに嫌なのか、自分の気持ちを整理してみることです。実家がなくなるのが不安、親と一緒に暮らせなくなるのが寂しい、といった感情がまず思い浮かぶようであれば、自分本位な要求ではないでしょうか。

 ご両親は、先に逝くであろう自分たちの老後と、残される娘の幸せを見据えて決断されたはずです。これを良いきっかけとして、あなた自身も人生を一歩踏み出してみてはどうでしょうか。

【お悩み その3】老人ホームで要介護の母と自立の父はいっしょに暮らせる?(55歳女性)
 85歳の父が、自宅で認知症の母の面倒をみています。元気だった父ですが、最近は家事が負担になってきたのか、「楽をしたい」と気弱なことを言うようになりました。母の有料老人ホームへの入居を提案したところ、父は離れて暮らしたくないと言います。二人一緒であればホームに入ってくれそうなのですが、そういうところはありますか。

【回答】
 介護に加えて家事を切り盛りするのは、高齢の男性にとって大変なご苦労とお察しします。ホームに入って、お母さまの介護をプロに委ねることで、お父さまに気持ちの余裕が生まれれば、以前の元気を取り戻されるのではないでしょうか。

 ただ、要介護のお母さまと自立のお父さまが共に満足して暮らせるホームを探すのはなかなか難しいことです。有料老人ホームには、大きく分けて2種類あります。元気な人が暮らす「自立型」と、介護が必要な人を対象とした「介護専用型」です。この二つは設備もサービスもまったく違うものです。ご両親の場合は、要介護のお母さまのことを優先してホームを選択する必要があります。そう考えると介護を受ける人だけでなく、自立した高齢者も受け入れる「混合型」のホームを選ぶのが現実的でしょう。

 ただ、「入ってみたら周囲は介護が必要な人ばかり」ということもあります。事前に入居者の様子や、ホームの雰囲気をしっかり確かめることが大切です。

※週刊朝日ムック『高齢者ホーム2017』