昨年のワールドカップで大躍進し世界中の注目を集めた男子15人制の日本代表も、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(現イングランド代表ヘッドコーチ)が課したハードワークが注目されていたが、サクラセブンズは「エディー・ジャパンより走ってきた」と公言する。ただし、昨年の男子日本代表の場合、ハードワーク自体は目的でもなければ手段ですらなく、エディー・ジョーンズという世界最高の戦略家が考えた「勝てるゲームプラン」を遂行できるチームになるための大前提だったと言える。だから、ワールドカップ優勝2度の強豪南アフリカと80分間を戦った後の最後の1プレーで、選手全員がその瞬間にその状況で自分がするべきプレーを迷いなく選択・実行し、世界のラグビー史に残るトライを生むことができた。サクラセブンズは「世界一の練習量」で走り勝った先に、何を持っているのか。それが金メダルという目標にどこまで近づけるかを決めることになるだろう。

 長く、日本代表としても幾多の世界大会に出場している山口だが、決してバラ色の経歴ではなかった。サッカーにおけるFIFAに相当するラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」が主催する7人制ラグビーの世界大会「ワールドカップ・セブンズ」には2009年、2013年と連続で出場しているが、2大会ともに全敗。15人制でも、先に述べた2009年のワールドカップ・アジア予選に続き、2013年にもアジア予選に出場。出場権をかけた決勝のカザフスタン戦でも先制トライを奪うなどの活躍を見せたが、結果はわずか1ゴールの2点差に泣いた。山口にとって、これまで世界の舞台は遠く、また、厳しい場所だった。

 サクラセブンズの浅見敬子ヘッドコーチは、よく「このチームはアジア5位からスタートした」と振り返る。2010年の広州アジア大会。日本は香港に敗れてメダル争いができる上位4チーム入りを逃した。山口はこの試合で香港のエースにタッチライン際を走り抜けられトライを許している。自身にとっても悔しい経験からスタートした5年間の強化の集大成。2度のワールドカップ・セブンズに続く3度目の、そして、最高の世界大会の舞台で、今度こそ輝かしい結果を残したい。彼女のプレーが輝くほどに、日本が獲得するメダルの色の輝きも金に近づくはずだ。