ところで、なぜ、サクラセブンズはそこまでのハードトレーニングを行うのか。それはセブンズという競技の特性が大きくかかわっている。

 セブンズの競技規則は、得点後に試合を再開する際、どちらのチームがキックオフを蹴るかなどごく一部を除いて通常の15人制とほぼ同じ。違うのは1チームの人数と、前後半7分ずつ(決勝などは10分ずつ)という短い試合時間だ。試合会場の広さは15人制と全く同じで、70m前後の横幅のピッチに1チーム15人がひしめき合う通常のラグビーに比べると、ひとり当たり倍以上の走るスペースが与えられる。このため、密集近くに選手が真っすぐ突っ込んでもう一度密集を作ることを繰り返すような攻め方よりも、外に広がるスペースにボールを運んで攻める方が圧倒的に多くなり、選手もボールも大きく、速く動くことになる。

 また、タックルされた後のボールを争奪する局面(ブレークダウン)にかける人数も自ずと少なくなるため、密集でボールが停滞する時間がほとんどなく、キックで陣地を稼ぐことも少ないため、ラインアウトで一時試合が止まることもあまりない。このため、たった7分と思われがちだが、試合時間の中で実際にプレーが行われている「インプレー」の割合は大きく、通常のラグビーとは違ったスピードとアジリティー、フィットネスが求められる。

 一見体格差が出そうに見えるスクラムやラインアウトの比率が低く、選手同士の接触プレーも少ないセブンズは、かつては日本人向きだと言われていた。しかし、オリンピック競技となり、各国が強化に本腰を入れてからは、それが幻想であることが明らかになった。広いスペースの中での1対1の攻防が多くなれば、必然的に、身体が大きく、スピードにも勝る選手が有利になる。それは、女子も例外ではない。

 努力だけでは覆せないサイズや絶対的スピードの差をどう補うか。サクラセブンズは、選手個々のフィットネスを高め、チーム全体の実働時間の多さで上回ることに活路を見出すことにした。現体制による5年間の強化の中で、特に最初の数年間は、あえてボールに触る練習を減らし、スキルよりもフィットネスを高めることに注力してきた。つまり、男女を問わず多くの日本代表が掲げる「走り勝つ」スタイルだ。その甲斐あって、選手たちは「世界で一番練習をしてきた」と自信を持っている。アジア予選では、数年前は高い壁と思われていた中国やカザフスタンを下して優勝。強化の成果は確実に積み上がっている。一方、アジアを出て世界の舞台に立った場合、個々の強さやスピードという元々の差はもちろん、パスの長さや速さ、正確さといった技術面でもまだ劣るのが現実だ。

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