メンタル面の成長と充実はスポーツ選手にとって重要な要素である。しかし個人競技ならまだしも、団体競技にはチームの“熟成”も欠かせない。ところが今回のチームは、最終予選後にチームの主力だった松原(新潟)、室屋(FC東京)、中島(FC東京)、鈴木(新潟)の4選手が相次いで負傷し、直前の先週末のJリーグでは山中(柏)、豊川(岡山)まで負傷し、代表を辞退した。

 その結果、今回スタメンに名前を連ねた富樫と橋本(FC東京)は初の公式戦だったし、伊東は昨年7月以来2度目の公式戦出場である。にもかかわらず富樫はゴール、伊東はアシストという結果を残し、ボランチの橋本もフィジカルの強さと緻密なプレーで手倉森監督に、主将で中心選手である「遠藤(浦和)の不在を感じなかった」と言わしめた。

 今回招集された選手は、いずれも今シーズンのJリーグで結果を残している伸び盛りの選手だけに、当然と言えば当然の結果だが、チームが好調を持続しているのはそれだけが原因ではないような気がする。一つは手倉森監督の、何が起きても動じない“鈍感力”が選手に安心感を与えているのだろう。普通ならこれだけケガ人が多いと指揮官も不安になるが、手倉森監督は今ある状況を受け入れて、その時できるベストの選択をする。懐の広さが若い選手とマッチしていると言える。

 そしてもう1点は、最終予選で大胆なターンオーバー制を採用したように、特定の選手に頼ったチーム作りをしなかったこと。裏返せばそれだけの選手がいなかったからかもしれないが、それが最終予選でも、今回のガーナ戦でも好結果に結びついたのではないだろうか。これまでの代表にはないチーム作りに、もしかしたらリオ五輪でもサプライズを起こすかもしれない。そんな期待を抱かせる、不思議な“手倉森ジャパン”である。

サッカージャーナリスト・六川亨【週刊サッカーダイジェスト・元編集長】)