快挙を逃した6回は初ヒットからの3連打で1死満塁と、この日最初にして最大のピンチに。打席には昨季に42本塁打、130打点と大ブレイクし、今季もここまで7本塁打と好調なノーラン・アレナド。4点リードとはいえ、ここで失点すれば試合の行方が分からなくなる重要な場面だ。

 ここで前田は臆することなく内角中心のピッチング。0-2と追い込んでから内角高めの速球を見せ、最後はチェンジアップで完全にタイミングを狂わせた。セカンドへのインフィールドフライ。続く4番ジェラルド・パーラも速球2つで0-2とし、最後は低めのスライダーでピッチャーゴロに打ち取った。これなら「打者天国」の影響も全く関係ない。相手打者にバッティングをさせない、理想的なピッチングだった。ロッキーズの主砲カルロス・ゴンザレスも、「(前田は)インサイドもアウトサイドもしっかり投げてきたから絞りづらかった」と脱帽していた。

 3勝目を挙げた前田は、防御率もリーグトップの0.36に。メジャーデビューからの先発4試合で20イニング以上を投げて1失点以下は、史上初の快挙となった。2試合ぶりにバッテリーを組んだA.J.エリスは「クアーズ・フィールドでの初登板、ロッキーズの強力打線との初対戦でこれだけの投球をするなんて、ケンタのすごさは言い尽くせない。理解を超えているよ」と、前田を絶賛した。デーブ・ロバーツ監督にいたっては、「(前田は)月面でだって投げられる」とユニークなコメント。低目への制球を保ち続けた前田ならば、重力が地球の1/6の月でも問題ない。コントロールを身上とする投手に対して、これ以上のほめ言葉はないかもしれない。