当初は島民の理解を得るのに苦労したが、だんだんと協力者も増えてきた。漁業以外にも島に産業を興そうと、地元産のスジエビを使った「沖島えびせんべい」、耕作放棄地で栽培したサツマイモを原料にした芋焼酎「沖の雫」を開発。将来的にはカヤックツアーや古民家での宿泊といった沖島での生活体験や家族連れが楽しめる場所の整備も進めていくつもりだ。

「島の人たちの理解を得ながらできることをやっていきたい」と福井さんは話す。

 島内でも島おこしは進んでいる。13年、国が活性化を支援する離島振興対策実施地域に指定されたのをきっかけに、島民らにより沖島町離島振興推進協議会が結成された。現在は、フェイスブックでのPRや、島で取れた野菜や湖魚の加工品を使った島限定の手作り弁当「沖島めし」(要予約1200円)の販売、遊覧船の運航(4~10月の土日祝日)などで島をもり立てる。

 島外から協力者を募るファンクラブのメンバーは約160人にまで増えた。年会費は1000円で、島内のお店で使える割引券や会員証代わりの手ぬぐい、ふなずしなどの郷土食詰め合わせの優先購入権の特典がある。事務局の女性は「のんびりとした島の良さをPRし、いずれは島に移住してくる人も増えてほしい」と期待する。

 あまりにもが見つからず、心が折れそうになったころ、ようやく漁船にちょこんと座った猫を見つけた。漁師の男性がさばいている魚をじっと見ている。そっとカメラを構えると、ふいに、男性が魚のかけらを筆者の足元に投げた。猫は素早く魚をくわえ、さっと身をひるがえし、こちらを見向きもせずにがつがつと魚をほおばり始めた。ぼうぜんとしていると、男性がにやりと笑った。

 魚をさばく漁師に魚をほおばる猫。静かな湖面に渡り鳥が泳ぎ、海鳥が頭上を飛んでいく。なるほど、猫島かどうかは分からないが、ゆったりとした時間が流れる、すてきな島だ。日常を忘れて、ちょっとのんびりしたい人は、足を運んでみてはいかがだろうか。(ライター・南文枝)