「弁護士、医師や歯科医師、薬剤師、これら資格を持つ人が借金などの生活苦で生活保護受給の相談にやって来ることは今では珍しいことではありません。ただ、こうしたケースは借金だけの問題です。なので生活保護受給での対応はせず、別の相談窓口を個々のケースに応じて紹介します」



 このように働けるのに生活保護受給申請を求める事案は、今や大学卒業年次の就職活動中の学生まで広がりをみせ、行政を困惑させている。京都市のケースワーカーはこう証言する。

「有名大学の学生が窓口にやって来て、『とても就職できそうにないので生活保護を受給したい』と言い張り、大学に連絡して連れて帰ってもらったこともあります。この制度そのものをどこか勘違いしている典型です」

 もちろん生活保護受給しなければならないケースもある。兵庫県内の自治体に勤務するケースワーカー(40歳・女性)が語る。

「元CAや元タレントもいました。彼女たちに共通するのはDVで夫の下から逃げて来たというところです。自らの資産も夫が管理する、もしくは婚姻を機会に夫名義にして、急ぎ離婚したのでめぼしい本人資産がなく行政にSOSを求めたというものです。なかには財産分与の協議をせず離婚を優先させたので所持金(全資産)が500円玉2枚と百円玉と50円玉少しで乳飲み子を抱えて……というケースもありました」

 こうしたかつて師業や大手企業、華やかな職に就いていた高学歴な人たちが生活保護受給申請の相談に役所にやって来るのは、おおむね、年の瀬か年度末だという。

「気持ちの区切りがつくいい時期だからです。年末、年度末という区切りで人生設計を立て直してほしい。その結果が保護受給になるか、違う何かになるかはわからない。でも行政は、立ち直ろうとする人を決して見捨てない。何でも遠慮なく相談してほしい」(大阪市課長代理)

 もうすぐ年が明ける。人生の再出発にはいい時期の年の瀬、最後のセーフティーネットとして行政に駆け込む人が増える時期である。だがこの行政に甘えてばかりではいけない。自らの足で自立してこそ本当の人生のリスタートだ。