特別強化選手に選出されていた早川さくら(イオン/日本女子体育大学)と皆川夏穂(イオン/大原学園高)をロシアでの長期合宿に送りこんだのだ。当時、早川が高1、皆川が中3。2人ともジュニアでの実績はある選手だが、その時点では日本チャンピオンというわけではなかった。それでも、能力、スタイルなどさまざまな資質から「リオ五輪に向けての強化」を、この2選手に絞ったのだ。

 13年からはワールド杯を連戦、世界選手権も国内での選考を免除されて出場、と日本の新体操界ではかつてない破格の扱いで2人の強化は進められてきた。当然、国内からは不満も出ていたことと思う。しかし、それぞれの不平不満を抑えてもこの強化策に懸けるしかない、というところまで日本の新体操界は、追い込まれていた。

●ロシアでの長期合宿で力をつけた早川さくら、皆川夏穂に期待

 しかし「日本の新体操の未来」を双肩に負うことになった早川、皆川は、この3年弱で着実に世界での存在感を増してきた。

 14年の世界選手権では、早川16位、皆川23位と2人そろって決勝進出(予選24位までが決勝進出)。今シーズンに入ってからは、皆川がワールド杯ポルトガル大会で8位入賞。早川はアジア競技大会3位、ユニバーシアード7位。今回目標とする「世界選手権での15位以内」も十分に可能性があると言えるところまではきている。

 また早川さくら、皆川夏穂とも、団体のフェアリージャパンPOLAにも劣らぬ素晴らしい容姿の持ち主だ。もちろん、新体操的な能力の高さ(柔軟性や手具のコントロール能力)も併せ持っており、海外の選手たちと並んでもまったく見劣りすることはない。海外の審判や観客の中にも「美しい日本の選手たち」と高く評価する人も多く、今回の世界選手権、ひいてはリオ五輪には、かつてない期待を抱いてもよさそうだ。

 新体操の個人競技は、ロシア、ベラルーシ、ウクライナなど新体操強国の選手らでトップ8あたりまではほぼ揺るぎがない。日本の早川、皆川の狙いはその下のグループになりそうだ。それでも、あくまでもベストの出来、もしくは最小限のミスで抑えることが必須条件となる。

 「色香と美しさで魅せる」早川さくらと、「ダイナミックなジャンプと、高難度の手具操作」皆川夏穂。それぞれの強みは世界でもトップレベルと言われる2人が、その力を発揮できれば、リオ五輪の切符に限りなく近づくことができることは間違いない。

世界新体操選手権の個人総合決勝は9月11日、団体総合決勝は9月12日に行われる。「個人、団体そろっての五輪出場」という悲願達成はなるか。注目したい。

(ライター・椎名 桂子)