「家庭で作るという前提でお話しすると、一般にフルーツジュースとは2つ以上の果実から搾った果汁100%のものをいいます。一方、フルーツ・オーレは、この果汁100%のフルーツジュースを牛乳で割ったもののこと。ミックスジュースはいくつかの果実をミキサーに入れる段階から牛乳を加えて混ぜたものを指します。とはいえ、きちんとした定義や名称は決まっていません」(料理評論家・伊藤純恵さん)

 もっとも飲料メーカーがこれらを商品化する場合、明確な定義がある。そのレシピに応じて用いるべき用語(商品名)と定義が、消費者庁の「果実飲料品質表示基準」に定められているからだ。たとえば「果実ミックスジュース」だと次のようになる。

《2種類以上の果実の搾汁若しくは還元果汁を混合したもの又はこれらに砂糖類、はちみつ等を加えたもの(みかん類の果実の搾汁又は還元果汁を加えたオレンジジュースであって、みかん類の原材料に占める重量の割合が10%未満、かつ、製品の糖用屈折計示度(加えられた砂糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除く。)に寄与する割合が10%未満のものを除く。)をいう。》

 消費者庁の基準だと、2つ以上の果実を搾った果汁100%のそれが“ミックスジュース”だ。これを牛乳で割った“フルーツ・オーレ”は、カフェ・オーレの例にみられるように、フランス語のau lait(牛乳)から来ている。とく“オーレ”については行政による明確な基準はない。

 もし、この基準を飲料メーカー側が守らなかったならばどうなるのだろうか。消費者庁に聞いた。

「JAS法に基づいて行政指導します。強制力はありません。それで従わない場合は改善命令を出します」

 こうした背景から、飲料メーカーでは「ミックスジュース」の名称を用いず、先述の“フルーツ・オーレ”“フルーツ・ミルク”といった各社独自の名称を用いることになる。

 大阪名物「ミックスジュース」として飲料メーカーが販売できないのは、このような“大人の事情”があったのだ。

(フリーランス・ライター 秋山謙一郎)