日本人選手に対しても打撃投手を務めるなどして、ローズの親身の指導が奏功している。主将の大上戸(だいじょうご)健斗がハッとさせられたのは、「構え遅れするな」という助言だった。「次打者席から打席に向かい構えるまでに主導権を握り、投手に自分の間で投げさせないことの大切さ」を気づかされた。また、ローズが打席に立つ姿から学ぶことは多いという。

「ローズさんは、ブランクがあるはずなのに、その影響がまったくない。投手をよく観察し、その時の状況、そして投手1人1人、ボールカウントに応じて1球1球打ち方が違う。タイミングの取り方を変えているのがすごい。そしてオーラがある。常に打てそうな雰囲気を醸し出している」(前出の大上戸)

「高い言語能力を備えた、生きた打撃の教科書」ともいえるローズの存在感は際立っている。

 近鉄時代、ファーストストライクを積極的に狙い、センターを中心にさまざまな方向に打ち分けて本塁打を量産したのがローズ。2001年に、王貞治が持っていた当時の日本記録に並ぶ55本塁打を放った時、走者を置いた打席での本塁打は33本と勝負強かった。そのバッティングの奥義を今、惜しみなく富山の選手に伝授しているといえる。

 近鉄、オリックス時代のファンが北陸までBCリーグ観戦に訪れ、オリックスのユニホームにサインを求める姿をよく見かける。ローズ人気はいまだ健在である。

 ところで、オリックスは、来季の監督候補に大リーグ・マーリンズのイチロー外野手に対して、選手兼監督として非公式で打診したらしい。BCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサスのシニアディレクターだったアレックス・ラミレスは、オリックスの巡回アドバイザーに就任した。独立リーグとのパイプを強化することになり、指導者としての手腕も申し分なければ、「ローズを指導者に招聘(しょうへい)」という声も挙がるかもしれない。熱望するファンも少なくないはずだ。

「選手同様、監督・コーチもNPBを目指してBCリーグで実績を積んでほしい。ローズ獲得に際しても、『NPBを見据えて富山で頑張ってほしい』と交渉した」(富山の永森茂社長)

 今後も「ローズのこれから」に注目だ。
  
(ライター・若林朋子)