「まずは社員に生物多様性を浸透させたいけれど、特に自然から遠い都市部の社員はどうもイマイチぴんとこない。そこでこんな都会の小さな緑にも生きものがいる! とわかって欲しくて観察会を考えました。会社にとって原動力である社員一人一人が『自然ってスゴイ!』と思ってくれたら、生物多様性に役立つ製品開発に結びつくかもしれないし、仕事の中で何をすることが生物多様性に役立つのかと考え行動出来るようになるかもしれない」(同 勝田淳二さん)。

 観察するからには自然の知識が深い人と一緒に歩きたい。そこで、NACS-Jの自然観察指導員に頼めないかとアプローチ、民間企業と環境団体とのコラボという形にもなった。

 生物多様性の定義は何となく分かっても、それが自分が暮らす社会とどう繋がっているか、そこがなかなか見えないことが生物多様性のわかりにくさかもしれない。しかし、朝7時半から8時半までのたった1時間弱、日頃通うビルの足元にある緑を見直すだけで、いろんなものが見えてくる。今まで単なる白い花でしかなかったものが、近い種類のものと隣り合わせに生えていて、それぞれにおいが異なっていることに気がつく。名前も、テイカカズラ、スイカズラという名だと覚えるようになる。そうすると、道を通るたびにその花を見るようになるし、花にくる昆虫も目に入るようになる。
「いつも駅からまっすぐ会社に繋がる道しか歩かないので、ビルの裏にこんな緑地があるのを知りませんでした。今日の観察会ではアブラムシが印象的で、これからアブラムシが気になってしょうがなくなりそう」とは女性参加者の声だ。

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