「アブラムシがびっしり!」驚きの発見に声を上げるソニー社員
「アブラムシがびっしり!」驚きの発見に声を上げるソニー社員

 5月22日(金)。この日は国際生物多様性の日である。この日、大崎駅からほど近いソニーのオフィスビルの裏にある緑地で、総勢50名ほどの老若男女が7〜8名のグループに分かれ、しゃがんだり、見上げたりしながらわいわいと盛り上がっていた。実はこれ、ソニーと明電舎による社員向け合同の自然観察会である。各グループにはリーダーがいて、それは(公財)日本自然保護協会(以下NACA-J)の自然観察指導員たち。参加者の男性は「観察会に出る前と後ではこの緑地はまるで別のものに見えてきましたよ。ビルの合間のこのスペースに、驚くぐらい生きものがいて、活動しているんです」と、笑顔で語ってくれた。この観察会は、2010年からソニーが環境活動の一環として始めたもので、すでに13回を数える。今回のテーマは「薫りから感じる」だ。

 企業の環境活動というと、多くは社内や近隣地区の美化清掃を行うとか、植林などによるカーボンオフセットに取り組むなどが一般的だろう。環境省では「生物多様性民間参画ガイドライン」を策定し、企業へ生物多様性の保全を呼びかけしているが、生物多様性という概念自体がまだ広く伝わっていないのが日本の実態である。この言葉をよく聞くようになったのも、2010年に名古屋で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」以降ではないだろうか。生物多様性とは、環境省のサイトによれば「生きものたちの豊かな個性とつながりのこと」。大切だが見えにくいこれを、ソニーでは社としての環境計画に入れているが、それはなぜだろうか。

 「企業にとって、生物多様性というのは無縁ではありません。このまま生態系サービスを使い尽くしてしまっては企業も人間社会も成り立ちません。企業の長期的な経営や社会的貢献を考えたとき、生物多様性に目を向け、持続可能な社会を作るために踏み出していくことは私たちの役割のひとつだと思っています」と、担当部である環境マネジメント部環境推進課の志賀啓子さんは言う。

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