●具がたまねぎ!「足利シュウマイ」

 「ご当地焼売」のなかには、肉や魚貝類が入っていない焼売もいくつか存在する。その代表格のひとつは、群馬県桐生市にある「コロリンシュウマイ」だが、それと双璧をなす焼売が、栃木県足利市にある。その名も「足利シュウマイ」。具はたっぷりのたまねぎが中心で、スーパーなどにも置いてある地元ゆかりのグルメであるそうだ。

 足利にある居酒屋『樹洞(うろ)』の焼売を食べてみた。まず印象的なのは、かなり鮮烈なたまねぎの香りだ。食べてみるとたまねぎの風味はあるが、独特のえぐさなどはなく、意外とあっさり。むしろ、それにつける「ソース」の風味が特徴的だ。ご当地ソースの「月星ソース」をつけていただくのだが、一般のソースよりもスパイシーで、それとあっさりしたたまねぎの甘味とのコンビネーションが絶妙である。地元の方によると、店によって使うソースも異なるとか。聞けば、足利はソースが名産。「いかしゅうまい」同様、ソースという地元食材の個性も味わうご当地グルメなのである。

●50年以上北海道民に愛され続ける「しゅうまい揚」

 最後は番外編。焼売は蒸すだけでなく、揚げるタイプも数多くある。北海道民に長年愛されている「しゅうまい揚」も、この類かと思いきや、焼売でもない魚のすり身の揚げ物、すなわち「かまぼこ」だ。「しゅうまい揚」発祥の店とされる『玉屋食品』から商品を取り寄せみると、すり身の魚のほんのりとした甘さと、ほのかにぴりっとしたカレーのスパイスが効いて、食欲が進む完成度の高いおかずである。

 そしてこのカレーにこそ、「しゅうまい揚」の名の由来があった。創始者が戦後かまぼこを製造する際、珍しい食材を盛り込もうと思い、カレー粉を選んだ。それを中華料理の食材と勘違いして、「中華料理と言えば、焼売だ!」と断定し、その名がついたという。

 今回は豚肉の具を使った王道的な「ご当地焼売」は紹介しなかったが、横浜の崎陽軒を筆頭に、おのおのの個性と味を持つものが全国各地で見られる。それを語り出すと、とてもスペースが足りないので今回は割愛するが、それだけ各地には魅力的な「ご当地焼売」が存在するのである。ぜひ「ご当地グルメ」のひとつとして頭に入れておいてほしい。

(焼売ジャーナリスト・シュウマイ潤)