ヤクルト・真中満新監督も大補強に思わずニンマリ!?(c)朝日新聞社 @@写禁
ヤクルト・真中満新監督も大補強に思わずニンマリ!?(c)朝日新聞社 @@写禁

 チーム打率.279はセ・リーグ1位(2位広島.272)、得点667も2位広島の649を引き離す1位――ヤクルトの2014年度の打撃成績である。パ・リーグでは、打率、得点ともリーグ1位のソフトバンクが優勝している。ヤクルトもそれなりの順位に収まっていないとおかしいが、チーム成績は最下位。それも5位DeNAに6.5ゲーム差つけられる2年連続の最下位である。低迷の原因は投手陣の不振に尽きる。

 打率3割を記録した打者は山田哲人、雄平、畠山和洋、川端慎吾、バレンティンと5人を数えるのに対して、投手陣で規定投球回を満たしたのは石川雅規ただ1人。この”投壊現象”の最大の原因は故障者の多さと断言していい。どんな故障選手がいるのか見てみよう。

 由規…………右肩故障で3年連続一軍登板なし
 館山昌平……右ヒジ靭帯断裂で一軍登板なし
 平井諒………右肩故障で一軍登板なし
 日高亮………左ヒジ痛で一軍登板は1試合(投球回数0.2回)※7月にソフトバンクに移籍
 杉浦稔大……ドラフト1位もキャンプ中に右ヒジ靭帯断裂。一軍登板は4試合(投球回数23回)

 彼ら以外でも、左腕の先発として期待されていた村中恭兵が7試合登板(35.2回)、赤川克紀が14試合登板(29回)にとどまっている。コーチングの巧拙だけでなく、体の手入れや異常を発見するトレーナーや理学療法士をいかに充実させていくか、球団としてやることはいっぱいありそうだ。

 トレードやFA選手の獲得といった面に目を向けると、伝統的に不熱心なことがわかる。過去3年間、他球団から移籍した選手は次の11人しかいない。

 楠城祐介 12年楽天
 水田圭介 12年中日
 木下達生 12年中日
 阿部健太 12年阪神(トライアウト組)
 田中雅彦 13年ロッテ
 岩村明憲 13年楽天
 藤田太陽 13年西武
 真田裕貴 14年台湾・兄弟
 今浪隆博 14年日本ハム
 新垣 渚 14年7月にソフトバンクからトレード
 山中浩史 14年7月にソフトバンクからトレード

 たとえば、巨人の過去3年間の移籍組は、杉内俊哉、ホールトン、村田修一、石井義人、香月良太、青木高広、井野卓、大竹寛、井端弘和、片岡治大など15人を数える。顔ぶれの豪華さでもヤクルトを圧倒する。

 トレーナーや理学療法士の整備、トレードの活発化には、ある程度の資金の投入が必要だ。上位球団の巨人、阪神にくらべ資金力が潤沢でないヤクルトの泣き所とも言える。

 ところがこのオフ、ヤクルトのトレード戦略が活発化している。FA権を取得した大引啓次(日本ハム・遊撃手)、成瀬善久(ロッテ・投手)を次々に獲得したのだ。まだ、正式に発表されていないが広島の抑え、ミコライオの入団も有力視される。

 ヤクルトの弱点が、見事に補強されているではないか。先発投手陣は、小川泰弘、石川雅規、八木亮祐、石山泰稚、ロマンの中に成瀬が入るだけで一本芯が通ったように見える。これが巨人や阪神だと過剰なトレードは平均年齢の引き上げにつながり、マイナス視される材料になる。だが、ヤクルト投手陣は若手中心なのでベテランの補強はマイナス材料にならない。

 また、リリーフ陣もバーネットの去就が不透明なので、ミコライオを獲得できればゲーム終盤の戦い方に計算が立つ。過剰にならず、補強ポイントに適切な人員を充てる―これは資金の投入が制限されるヤクルトのようなチームが強くなる唯一かつ絶対的な方法である。

 野手では唯一の弱点だったショートに大引が入りスキがなくなった。大引は、攻守のバランスが取れているだけでなく、リーダーシップに秀でたキャプテンタイプとしても知られる。二、三塁が若い山田哲人と川端慎吾なので、その間のショートに来季31歳になり、守備のうまい大引が加入することで、内野手全体から浮ついた不安定感が払拭される可能性がある。

 近年、ヤクルトがこれほど見事な補強をしたのを見たことがない。不安材料を一掃した来季のヤクルトは一躍、優勝候補の一角に名を連ねたと言っていいだろう。

(スポーツライター・小関順二)