未曾有の革新性にあふれたももクロ 4thアルバムは2016年の最重要作品(Album Review)
未曾有の革新性にあふれたももクロ 4thアルバムは2016年の最重要作品(Album Review)

 ももいろクローバーZにとって約3年ぶりのオリジナルアルバム。2枚同時リリースの片翼にして“4th ALBUM”となるだけに、本作はその先の未知の世界を体感できる革新性が特徴だ。

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 “寝て見る夢”をコンセプトに、打ち込みの楽曲が多く音楽性の振れ幅はよりワイド。薄霧の向こうにある光と影がゆっくりと某かに象られていくような、不思議な全体像が何とも心地よい。

 古くからももクロにアグレッシブなサウンドを与えてきた鬼才 NARASAKI(特撮 / COALTAR OF THE DEEPERS)によるプロローグからの「桃源郷」を聴いただけでも、その凄味は理解できるだろう。さらにアルバムは、生弦と打ち込みが絡みあう「白金の夜明け」で異次元の深みへ。かつて共演で話題を呼んだKISSや、アデルの最新作も手がけたグレッグ・クスティン、数々のトップスターたちの作品にも参加しているUSエレクトロ女子 ニコール・モリエなど、世界的な面々がタクトを振る規格外のサウンドが続いていく。

 また、ブラックミュージックに日本独自のキャッチーさが融合したinvisible manners渾身の1曲を、ピエール中野(凛として時雨)やハマ・オカモト(OKAMOTO’S)ら一線級プレイヤーがバキバキに昇華させた「マホロバケーション」は音楽ファンなら必見だ。ORANGE RANGEのNAOTOが、妙技とも言うべきダークで奇妙なポップセンスを響かせていく「カントリーローズ -時の旅人-」と対比してみるのも面白い。

 3rd『AMARANTHUS』にも参加している清 竜人や前山田健一の挑戦的なサウンドが、既存のシングル曲と交わりながら盛り上がっていく終盤。長くジャパニーズヒップホップを支え続けるMUROが、どこか懐かしいサウンドと言葉選びで抜群のグルーヴを生み出す「もっ黒ニナル果て」の存在感はさすが。そして堂本剛ジャニーズ以外に初めて楽曲提供したという「桃色空(ピンクゾラ)」の頃には、かつてない恍惚の境地へ辿り着く。

 音楽好きな人にはタマラない意欲曲の数々を存分に楽しめる『白金の夜明け』が、もう一方と合わせてシーンに新たな衝撃を与えるのは間違いないだろう。ここを起点に新たなフェーズに突入するであろうアイドルシーンの今後を思えば、両作を2016年の最重要作品だとぶち上げても早計ではない。

Text:杉岡祐樹


◎4thアルバム『白金の夜明け(ヨミ:ハッキンノヨアケ)』
2016/2/17 RELEASE
[初回限定盤(CD+Blu-ray)]
KICS-93309 3800円+税
[通常盤(CD Only)]
KICS-3309 2800円+税