数日後、有賀さんの元に投稿者のメールアドレスとIPアドレスが書留で届いた。有賀さんは本誌2月号<損害賠償&削除要請マニュアル>のサンプル文を参考に、投稿者に使用料請求メールを送った。

 投稿者の対応は早かった。即日メールの返信があり、翌日には有賀さんが請求した6万円の使用料が指定口座に振り込まれていた。投稿者は有賀さん宛てのメールで「著作権を侵害しているという意識がありませんでした」と自身の認識の甘さを認めて謝罪したという。

「すぐに使用料を振り込んでくれたのはうれしいのですが、投稿者もまたLINE社の被害者。DeNA騒動で各社がキュレーションサイトを一時閉鎖するなか、著作権侵害の温床である『NAVERまとめ』はサービスを続けています。本来なら、サイトをいったん閉鎖し、無断転載で構成されるページを徹底的に洗い出すべきなんです」(同)

 有賀さんはLINE社自体の責任を追及したいと考えているが、同社が投稿者個人に責任を押しつけるような現状に納得できずにいる。

 一方で、投稿者側や運営側の著作権意識の低さも根深い。

 実はある投稿者はキュレーションサイトの運営会社から「ジャニーズ事務所とディズニーは写真の使用が厳しいので、それらを避けて、できるだけきれいな写真を探してください」と言われたことがあるという。

 有賀さんは言う。

「著作権侵害を誘発させる仕組みをそのままにしているLINE社に対して、個人でできることに限りがあります。プロバイダ責任制限法の改正など、法的な整備が進めば望ましいのですが、著作権を侵害された人ひとりひとりが、使用料を請求していくことでも変わっていくと思うんです。だから僕もブログでその情報を発信し続けていきます」

(取材・文/吉川明子)

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