きのした・ゆういち/1985年、和歌山県生まれ。木ノ下歌舞伎主宰。京都造形芸術大学在学中に古典演目上演の補綴・監修を自ら行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。2016年度文化庁芸術祭賞新人賞など受賞多数。24年からまつもと市民芸術館の芸術監督団長(撮影/写真映像部・馬場岳人)
『物語の生まれる場所へ 歌舞伎の源流を旅する』(2530円〈税込み〉/淡交社)古典芸能作品の補綴や監修の第一人者でもある著者が、歴史と伝説というフィクションを併せて読み解きながら「物語の力」について考察する秀逸な「物語論」だ。歌舞伎の名作の舞台となっている土地を訪ね歩き、その物語がどのようにして誕生してきたのかを探る新しい紀行文集でもある。人は生きるのになぜ物語を必要とするのか。物語がもつ危うさやその先にまで届く眼差しは鋭くあたたかい