撮影:斎藤巧一郎
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2013年、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。和食とは「『自然を尊ぶ』という日本人の気質に基づいた『食』に関する習わし」と位置づけられた。

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斎藤巧一郎さんが撮影した和食の素材づくりの現場を目にすると、まさに「自然を尊ぶ」日本人の姿を見る思いがする。

斎藤さんがイメージした和食は、料亭で出されるような豪華なものではなく、「日常のテーブルシーン」だと言う。

「お茶を飲みながら、ノリで包んだご飯の中に梅干しが入っているおむすびを食べて、行ってきます、みたいな。そんなことを思い浮かべました」

撮影:斎藤巧一郎

日本のダージリン高原

ノリと茶の生産者を撮影に訪ねた鹿児島出水市は斎藤さんの故郷でもある。

鶴の越冬飛来地として知られる出水市は北に向かって遠浅の八代海(やつしろかい)が広がり、南には標高1067メートルの紫尾山(しびさん)を主峰とする出水山地がある。

「海から山に風が吹きつけて雲が湧き、雨が降る。それを源とする湧き水が出水市にはたくさんあります。そんな水が海に注ぎ込む。そこで作られたノリはうまい、というわけです」

ノリの収穫時期は1月から3月。写真には冬の海で大きく成長したノリが海中でゆらゆらと揺れている。よく晴れた日とはいえ、冷たい海水に腰まで漬かりながらノリを摘み取るのは大変な作業だ。

ノリの収穫が最盛期を迎えるころ、出水山地の中腹、標高500メートル付近にある茶畑は雪で覆われる。

「冬は膝ぐらいまで雪が積もるような場所です。なので、私は『日本のダージリン高原』ってアピールしたらって、市のPR担当者に言っているんです」

ダージリン高原はインド・ヒマラヤのふもとに広がる世界的な茶の産地である。鹿児島県は静岡県に続く全国2位(22年)の荒茶の生産量を誇る。

茶摘みを撮影したのは5月中旬。茶畑の畝が整然と並び、黄緑色の新芽が空に向かって真っすぐに伸びているのが印象的だ。摘み取った新芽は蒸してからもみ、それを乾燥すると荒茶になる。

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黄金色に輝く梅