抗菌薬の内服は、カンジダ膣炎の原因の一つです。膣や外陰部も、消化管内と同様に菌同士がバランスをとって共存しています。特に、デーデルライン桿菌(かんきん)が存在することで酸性に保っているおかげで、外部からの菌の侵入を防いでいます。けれども、抗菌薬を内服することによって、菌同士のバランスが崩れてしまい、カンジダが異常に増殖してしまうのです。
抗菌薬の内服の他に、糖尿病、化学療法、免疫抑制剤の投与、放射線療法、経口避妊薬の内服、通気性の悪い下着の着用や不適切な自己洗浄などが誘因となります。外来をやっていると、感冒や過労、睡眠不足や体調不良などの後にカンジダが出現したというケースもみられます。石鹸でデリケートゾーンを洗い過ぎる、トイレの後にビデで膣内を洗っていることによって発症する、なんてケースもありました。これらの誘引も、抗菌薬の内服の時と同様に、正常細菌叢が乱れカンジダが異常増殖する、つまり菌交代現象を引き起こすことによって、症状が出現するのです。
カンジダは常在菌です。女性においては正常な細菌叢の約25%をカンジダが占めています。性交渉の有無にかかわらず、発症する可能性があります。性感染症と勘違いされやすいのですが、そうではなく、女性自身が持ち合わせている疾患とも言えるでしょう。
カンジダ膣炎の女性における症状として、非常に激しいかゆみが出現し、白く濁ったおりものが増えることが特徴です。おりものは、カッテージチーズ様、酒粕様、と表現することもあります。
抗真菌薬の膣剤を膣内に挿入することで治療することができます。けれども、カンジダ以外の原因菌による感染や他の菌との混合感染を起こしてしまっている、なんてケースもあります。ですから、初めてカンジダかもしれないと思った方も、またカンジダになってしまったかも……という方も、婦人科を受診してくださいね。
通気性の悪い下着の着用やデリケートゾーンを洗いすぎているかも、という方は、今一度、ライフスタイルを見直してみるのもいいでしょう。常在菌であるカンジダと、うまく付き合っていけるといいですね。
◯山本佳奈(やまもと・かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー、CLIMアドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)