さらに2016年初頭に実現したTOBによる横浜スタジアムとの経営一体化により、これまで以上に快適なインフラの設備や、球団オリジナルフードやビールの開発、販売により、より密度の濃いサービスを提供できるようになっている。

 もちろんチームや選手あっての球団である。チーム力は徐々にアップし、過去2年Aクラスに入り、昨年は19年ぶりに日本シリーズへ進出したことはDeNA人気に拍車をかけた。また成績が低迷していた時期においても中畑清前監督を中心に生え抜きのスター選手である筒香嘉智らがファンサービスを徹底し、さらにドラフト戦略を軸としたスカウティングと育成により、山崎康晃や宮崎敏郎など人気選手が次々と誕生していった。

 ここに紹介したものはごく一部であるが、いずれにせよこれらを戦略的に仕掛けた前球団社長である池田純氏の功績は大きい。既存の球団経営にはとらわれない方法論で改革を推し進め、後手に回ることなく状況を見極めた攻めの経営がプラスに作用した。ちなみに買収以前の2011年シーズンは28億円もの赤字を計上した球団経営は、池田氏が成し遂げたTOBが契機となり黒字に転化している。

 そして現在、球団は岡村信悟社長のもと新しいフェーズへと移行しようとしている。観客動員は稼働率を見てもすでに頭打ちであり、多くのファンがリピーターとして球場に訪れる現状を踏まえれば、新規ファンの開拓は難しい。現在、横浜スタジアムは改築中であり、野球のメイン会場となる2020年の東京オリンピックに向けて、6000席を増設し3万5000人収容の球場に生まれ変わるが、それを見越しても新たな新機軸が必要だ。

 そこで球団が2017年に打ち出したのが『横浜スポーツタウン構想』である。かねてより“街づくり”をテーマに、周辺地域でのPR活動などしてきたが、これまで以上に“街”と“球団”を繋ぐ試みがなされている。つまり『横浜スポーツタウン構想』とは、球団自らスタジアムの外に積極的に出ていき、ファンのみならず住民の方によりベイスターズを身近に感じてもらうといったアプローチである。

 例えば人気の高い『YOKOHAMA STAR☆NIGHT』のチケットが取れなかったファンのためにライヴビューイングを横浜市内で行ったり、またスタジアム周辺とオンラインショップにしかなったグッズ販売店を横浜の玄関口である横浜駅西口ジョイナスにオープンするなど、情報発信基地を増やしている。

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行政を巻き込み新たなファン獲得へ