野性爆弾・くっきー (c)朝日新聞社
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野性爆弾・ロッシー (c)朝日新聞社
野性爆弾・ロッシー (c)朝日新聞社
中西正男(なかにし・まさお)/芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「おはよう朝日です」(ABCテレビ)、「バイキング」(フジテレビ)などに出演中
中西正男(なかにし・まさお)/芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「おはよう朝日です」(ABCテレビ)、「バイキング」(フジテレビ)などに出演中

 14日にオリコンの“2018年上半期ブレイク芸人ランキング”が発表され、お笑いコンビ「野性爆弾」のくっきーが1位に選ばれた。

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 独特すぎる白塗りモノマネや、独特すぎる絵描き歌などオンリーワンの世界観で一躍ブレイク。8月には中国で作品の展示イベント「超くっきーランド」が開催されるなど、活動の幅がワールドワイドになりつつもある。

 僕はデイリースポーツの演芸担当記者時代から、約20年にわたって取材をしてきたが、周りの芸人仲間や関係者が異口同音に話すのは「くっきーがやっていることは、デビュー当時から全く変わっていない」ということ。

 演芸担当記者として、上方漫才大賞、上方お笑い大賞、ABCお笑い新人グランプリなどの審査員も担当してきたが「野性爆弾」のコントはいつ見ても、衝撃というか「よりによって、こんな大舞台で、なぜこのネタをやったのか…」という“読後感”がたなびくようなネタばかりだった。いきなりコントのストーリーが途切れ、耳をつんざくような大音量で不協和音が長時間鳴り響く。そして、そのまま幕を閉じるというような難解なコントを見終わった後の、なんとも言えぬ感情、何とも言えぬ会場の空気は今も生々しく残っている。

 ただ、一方、実は仲間内からの信頼は厚く、無頼に見えて、協調性は抜群。印象的だったのは2006年に「バッファロー吾郎」、「メッセンジャー」あいはら、ケンドーコバヤシ、「レイザーラモン」らが中心となって立ち上げたイベント「新吉本プロレス」に、くっきー(当時は本名の川島邦裕で活動)が出場した時のこと。土肥ポン太とのタッグで第1試合に登場。身長180センチ超の体といかつい風貌で観客を威圧しながらリングインし、お構いなしに暴れまわるのかと思いきや、試合が始まるときっちりした試合運びでクライマックスまで如才なく務め、第2試合へ美しくバトンを渡していた。

 普段のお笑いイベントではなく、暴走も味として受け止めるプロレスというフィールドだったが、きっちりと自分が求められることをやり、場を崩し切ることはしない。「またこの人と仕事がしたい」と相手に思わせることが売れっ子の資質だとしたら、その要素をこれでもかと見せた瞬間でもあった。

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