「昆虫食」が密かに注目を浴びている。人気モデルの藤田ニコルがテレビ番組でタランチュラやナメクジを食べたり、元AKB48の川栄李奈は好きな食べ物が虫であると公言したりと、若者を中心に話題となっている。
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7月、東京・渋谷では「昆虫食解体新書 祭」なるイベントが開催され、70名の定員に対し150名が殺到する注目ぶり。イベントでとりわけ人気を博したのが「コオロギラーメン」だ。なぜこんなにも人を引き付けるのか。生みの親でもあり、昆虫食の普及に努める篠原祐太さん(24)に話を聞いた。
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取材当日、Tシャツ半ズボンに虫捕り網を2本携えて、篠原さんは現れた。虫捕りの予定があるのか尋ねると、「いつでも捕れるように毎日持ち歩いています」と笑顔を見せる。いわば、これが彼にとっての「正装」。網が2本あるのは、誰かが一緒に捕りたいと言った時のためだという。
篠原さんが生まれ育ったのは、東京・高尾山の近く。自然豊かな環境で、原っぱや川で遊ぶことが大好きだった。初めて虫を食べたのは4歳の頃。その後もバッタやトンボ、蝶、蝉などを食べていたという。捕まえるだけでなく、自宅でも虫や魚、爬虫類、哺乳類と、部屋が埋まるほどの生き物を飼っていた。
当時のことをこう振り返る。
「虫を捕まえて、観察して、増やして、食べてと、とにかく楽しかった。たとえば、アクアリウムでは魚が死んだらエビが食べて、エビの糞をタニシが食べて、水草が光合成をして酸素を作って、それを魚が消費する。そういう一つの循環が生まれたときが一番うれしかった。とても美しいと思ったし、原体験です」
両親は生き物を飼うことを否定しなかった。しかし、虫を食べていることは大学生になるまで伝えることができなかった。
「親は気が付いていたのかもしれないけど、自分から言ったことはありませんでした。自分はおかしいんじゃないか、良くないことなんじゃないかという不安や罪の意識みたいなものがありました。でも、隠して生きることがしんどくなってきた。小中高の頃は『みんなと同じことをして嫌われない』ということをすごく意識していました。教室にゴキブリが出ても、僕は可愛いと思うし、捕まえてみたいと思うけど、周りに合わせて『気持ち悪いね』って殺したり……」
周囲に合わせることでモヤモヤした気持ちだけが残った。
「このままではいけないという気持ちになりました。いつか言わないと後悔する、と」