自身が話題になれば、昆虫食への関心も高まる。前述のとおりコオロギラーメンをふるまったイベントには来場者が殺到。最終日には、古くから篠原さんの活動に共鳴する作家・乙武洋匡の姿もあった。

 順調に昆虫食を普及できているように見えるが、危機感もある。

「今は食糧危機という文脈で語られることが多いけど、僕としては二の次。栄養価が高いものを探す中で虫に行きつくというのは消去法的な響きがある気がしています。虫のポテンシャルが高いと考えているからこそ、今後は昆虫食の魅力が自分の手から離れていくように、再現性なども考慮して取り組んでいかなければと思っています」

 また、虫に特別な思い入れを持ってはいけないと感じている。

「今の昆虫食は、好きな人が食べる愛好家の集まりみたいになってしまっている。それはもったいない」

 ただの好事家の集まりにしてはいけないという使命感。そして、こうも続ける。

「一番好きな食べ物を聞かれた時に『カミキリムシです』と答えると、それは嘘になってしまう。美味しいと思うのはやっぱり牛肉だし、大トロだし、それが食のリアルだと思っています。でも、虫にもいろんな魅力がある。だから、たまには体験してみたら、と思うんです。虫に特別な思い入れを持つのではなく、昆虫食を世界に届けることに強い思い入れがあります。こうして注目を集めている時期に昆虫食の魅力を知らない人たちに伝えたい」

 実際に記者(24)もコオロギラーメンを食べてみた。実は、昆虫を食べるのはこれが初めてではない。過去にタガメやグソクムシなんかも食べたことがある。しかしその時は素揚げ状態だったので料理というよりは調理という感じだった。

 じっと見つめるコオロギを割り箸でつまんでいざ口の中へ。舌の上に脚が触れるのが分かる。肝心のスープはしっかり出汁が効いていて、えびのような風味が広がる。麺ともしっかり絡んで美味しかった。

 イベントでコオロギラーメンを食べた人からも「香ばしくて美味しい」「ヘルシーな気がするから深夜に食べたい」と好評。100匹の出汁が入ったというスープを飲み干す人も続出した。初めて昆虫食を食べたという人も多く、大衆食であるラーメンが昆虫のハードルを下げた形だ。

 篠原さんは昆虫食の魅力を伝えるべく、猛烈な暑さの日本全国を駆け巡っている。(AERA dot.編集部・福井しほ)

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