女性の社会進出をいかに支援するか。労働人口の減少が進んでいる我が国が抱える喫緊の課題だ(※写真はイメージ)
女性の社会進出をいかに支援するか。労働人口の減少が進んでいる我が国が抱える喫緊の課題だ(※写真はイメージ)

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、「低用量ピル」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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サッカーの試合でパフォーマンスを低下させないように、低用量ピルを内服して月経周期をコントロールしたり、月経による鉄の不足を防いでいました。」

 そう語るのは、元なでしこジャパンのキャプテンである澤穂希さんです。選手時代に低用量ピルを内服していたことを、今年の3月に都内で行われたトークショーでお話しされました。大きな話題となっていましたね。

 低用量ピルの内服など、月経にまつわるデリケートな問題は、なかなか発言しにくいのが現状です。「生理休暇はあるけれど、そんなのを使って休むとサボっていると言われるから取れないのです」と、酷い月経痛を相談しに外来を受診される女性は多いです。

 日本は、低用量ピル後進国と言わざるを得ないのが現状です。

 2013年の国連人口部の統計によると、日本のピルの服用率はわずか1%でした。一方、フランスは41%、ドイツは37%、イギリスは28%、米国は16%でした。欧州におけるピルの内服率は、日本と比較してはるかに高いのです。日本は、韓国の2%、中国の1.2%にも及びません。

 私事で恐縮なのですが、低用量ピルにまつわる私の事例をご紹介します。二十歳をすぎた頃から生理痛がひどくなり、起き上がることすらできなくなりました。藁にもすがる思いで婦人科の先生に相談し、低用量ピルの存在を知りました。

 低用量ピルを内服してすぐに生理痛は消え、倦怠感や月経痛も、ほとんど感じなくなりました。いつ月経が始まるかを簡単に予測できるようになり、「そろそろ来るかな……」とそわそわすることもなくなりました。

 そんな低用量ピルは、毎日内服する必要があります。正しくは、21日間飲み続け、7日間休薬します。けれども、医師として働くようになった頃から、飲み忘れが多くなってしまったため、医局の自分の机の上に置くことに決めました。それからは、飲み忘れることなく内服できていました。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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