1980年、巨人・長嶋茂雄監督が退任し、世界の本塁打王、巨人・王貞治も現役生活にピリオドを打った。球界を代表する「ON」が、そのキャリアに大きな区切りをつけた昭和55年の9月13日に、松坂大輔は生まれた。そして、同級生のプロ野球選手たち、さらには同世代の人たちまでも含め、昭和55年生まれは「松坂世代」というカテゴリーでくくられるようにもなった。
彼らは、2018年に38歳になる。その年齢は、何とも微妙な扱いになる。サラリーマンだと、38歳といえば、会社内で中堅レベルだろう。出世レースの中で、頭角を現してくる人たちもいる。それでも、50代から60代の世代にしてみれば、まだ「若い」「青い」とも思われる存在だろう。
ところが一転、プロスポーツの世界では、30代後半になると「ベテラン」と呼ばれようになる。記憶に新しい、サッカー・ロシアW杯の日本代表は、長谷部誠34歳、本田圭佑32歳、長友佑都31歳。30代前半の選手たちが主力を占めたことで「おっさんジャパン」とも揶揄された。
野球界も、何とも不思議な“使い分け”になる。現役選手は、30代に入ってくると、いつしか「ベテラン」と呼ばれ、40代なら「超ベテラン」とまで称される。
ところが、指導者となると、話が大きく変わってくる。40代前半で監督になると「青年監督」、30代で引退してコーチに就任すると「若き指導者」「兄貴分」と呼ばれたりする。現役ならベテランだが、指導者ならば「若い」。その表現が、世間には全く違和感なく受け入れられるのだ。
抽象的な前置きが、何とも長くなった。
なぜ、このギャップを説明したのかというと、これからお伝えしていくテーマに、ダイレクトにリンクしてくる事象だからだ。
「松坂世代」の中で生じたその“対照性”を際立たせてみたい。
2018年7月3日、松坂世代から「監督」と呼ばれる男が、産声を上げた。場所は大阪・堺市。人口約84万人の政令指定都市。大阪の中心地・梅田から、関西国際空港から、ともに電車で30分。近畿地方の中心部に位置する至便な街でもある。
そこに、独立リーグの新球団が誕生することになった。