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日本のサラリーマンは世界でいちばん会社を憎んでおり、専業主婦の幸福度は低い――。そう指摘するのが、最近『朝日ぎらい~よりよい世界のためのリベラル進化論~』(朝日新聞出版)を著した橘玲だ。日本人が幸せになれない背景には、日本社会にはびこる根深い問題があった。
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最近になってようやく指摘されるようになったが、日本経済のいちばんの問題は労働生産性が低いことで、OECD35カ国中21位、先進7カ国のなかではずっと最下位だ。日本人は過労死するほど働いているが、一人あたりの労働者が生み出す利益(付加価値)は8万1777ドル(約834万円)で、アメリカの労働者(12万2986ドル)の7割以下しかない(※1)。
そればかりか、世界の労働者のエンゲージメント(会社や仕事に対するかかわり方)の度合いを調べると日本のサラリーマンは最低レベルで、もっともやる気がない。それもひとつの調査ではなく、OECDを含む10の機関でほぼ同じ結果が出ている(※2)。
これを手短に要約すると、「日本のサラリーマンは過労死するほど長時間働いているが、生産性がものすごく低く、世界でいちばん会社を憎んでいる」ということになる。
家庭に目を転じると、日本では若い女性の3割が「将来は専業主婦になりたい」と思っており、専業主婦世帯は約4割と先進国では際立って高い。しかし不思議なことに、家庭生活に満足している女性の割合を国際比較すると、共働きが当たり前のアメリカやイギリスでは7割が「満足」と答えるのに、日本の女性は4割ちょっとしかない。専業主婦になりたくて、実際に専業主婦になったにもかかわらず、彼女たちの幸福度はものすごく低い(※3)。
なぜこんなヒドいことになっているのだろうか。じつは、この問題はコインの裏表だ。専業主婦の家庭には、家事育児を妻に丸投げして会社に滅私奉公する夫がいる。
日本では、男は会社という「イエ」に、女は家庭という「イエ」に所属する。女性が出産を機に会社から排除されるのは、会社と家庭という2つのイエに同時に属することができないからだ。総合職でも子育て中は「マミートラック」という“ママ向け”の仕事をあてがわれることが、女性管理職がきわめて少ない理由になっている。