
1982年スペインワールドカップ、グループ2の最終戦は2日に分けて行われた。まず、6月24日はアルジェリア対チリで、アルジェリアが3-2で勝利。もう1つのカードである西ドイツ対オーストリアは翌25日に行われた。
すでに2勝していたオーストリアの勝ち点は4(当時は勝利に2ポイント)、西ドイツは1勝1敗で勝ち点2だった。アルジェリアは3試合を終えて4ポイント。最終戦で西ドイツが勝てば4ポイントで3チームが並ぶ。得失点差はアルジェリアが0、オーストリア3、西ドイツ2。つまり、西ドイツは絶対に勝利が必要だったが、勝ちさえすれば得失点差で首位に立つ。オーストリアは負けても2点差なら2位通過が決まる格好だった。そして西ドイツはオーストリアに1-0で勝ち、両チームは1次リーグを突破した。
前置きが長くなったが、これがワールドカップ史上おそらく最悪の「談合試合」である。ただロングボールを蹴り合っただけの西ドイツとオーストリアの試合はフェアプレー精神に著しく反するものだったが制裁は受けていない。買収や八百長ではなく、ルールの範囲内での出来事なので罰しようがなかったのだろう。この一件後、FIFAはグループリーグ最終戦を同一時刻に開始することにした。
こうした談合試合はサッカーの大会ではときどき起きている。2004年アジアカップの日本対イランも最後は談合になった。このときはイランが突然やる気をなくし、事情を察知した日本が呼応したのだが、今回のロシアワールドカップでの日本対ポーランドでは、日本が長谷部誠を投入するとともに試合を凍結する雰囲気を出し、ポーランドがそれに応えた。ただ、コロンビア対セネガルが1-0のまま終了することが条件なので完全な他力本願だった。
西野朗監督はかなり大胆な采配をしたといえる。結果オーライなのだが、先発6人を入れ替えたことで警告累積での出場停止を回避し、主力組を休ませて体力の回復ができた。試合から遠ざかっている選手に試合勘をつけさせることもできた。10分ほど実質的な試合時間が短かったことも疲労を軽減したかもしれない。しかし、これもすべてグループリーグを突破できたからこそ意味があるが、突破できなければ批判の袋だたきに遭っていただろう。