サッカー元日本代表の釜本邦茂(c)朝日新聞社
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後半、ピッチに向かう長谷部(中央)に声をかける西野監督。直後に、あのパス回しが始まった(c)朝日新聞社
後半、ピッチに向かう長谷部(中央)に声をかける西野監督。直後に、あのパス回しが始まった(c)朝日新聞社

 W杯2大会ぶりのベスト16となる決勝トーナメント進出を決めた西野ジャパン。好調だったコロンビア戦やセネガル戦と違い、第3戦のポーランド戦は苦境に立たされた。だが、「勝負」にこだわった結果、目標のひとつであるグループリーグ突破を果たした。元日本代表フォワードで日本サッカー協会顧問の釜本邦茂氏は、率直にどう感じたのか。ポーランド戦を含め、いまの日本の戦い方について話を聞いた。

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 まず、ポーランド戦ですが、先発メンバーをセネガル戦から6人も替えたこと、これは監督としての大英断ですね。これまでの2戦がチームとしての調子が良かっただけに、よく決断したなと思いましたよ。

 ただ、試合中は最終的なところでうまく機能していなかったところも見られた。たとえば宇佐美がボールを持ったら、誰がどこで受けるのかといったように、最終的なラインでつながりが悪かったところもあったね。選手間での慣れって大きい。だからこそ、本来、メンバーは固定されているほうがいい。ハリルホジッチ前監督のときのように試合ごとにメンバーを変えているようだと、戦術として機能しなくなることはよくあるんです。

 西野監督の6人替えは「それでも勝てる」という強さの表れでしょう。選手がよく見えてるんやね。

 後半35分すぎからのパス回し。おそらく試合を見ている人のほとんどが「なんだこりゃ」となったでしょう。うちでも家内が怒っていましたよ(笑)。ですが、ポーランドに0-1で負けても決勝トーナメント(T)に進めるという判断のもとでの試合の組み方であって、選手や監督にしてみたら、何が何でも決勝Tに進まなければいけないという目標があるわけです。最後の10分間がどうであろうが、どんなひんしゅくを買おうが、その選択肢があっていい。

 それに、ポーランドが1-0で勝っていたあの時、彼らはわざわざ2-0で勝つ必要もないのですから、日本でなくポーランド側がボール持ったとしても時間稼ぎはしますよ。だからこそ、ポーランドの選手はパス回しする日本選手にプレスもせず、ボールも取りに行かなかった。つまり、日本ではなくポーランドがボールを持ったとしても、結局、似たような展開になったのです。いろいろ言われると思うけど、そんなこと気にしていたら決勝Tにはいけません。もちろん、セネガルが1点入れたとしたら、「なんでいかへんかったんや!」と言われるでしょうけどね(笑)。

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メキシコ五輪でもあった「勝たなくていい」という選択