パラグアイ戦で存在感を示した香川真司 (c)朝日新聞社
パラグアイ戦で存在感を示した香川真司 (c)朝日新聞社
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 本番前の最後のテストマッチ。西野朗監督率いる日本代表は南米のパラグアイに4-2で勝利した。0-2で敗れたスイス戦から10人のスタメンを入れ替えて臨んだこの試合。親善試合のために南米からオーストリアへやってきたパラグアイは全体的にプレー強度が低く、特に後半にプレーがルーズになったことは割り引かなければならないが、ガーナ戦、スイス戦とあまり出番のなかった選手たちがチャンスを生かして結果を出したことは評価に値する。

 その中でも復調を印象付けたのがトップ下で先発した香川真司(ドルトムント/ドイツ)だった。

「今日は僕というよりも、チームとして攻守においていつ行くのか、行った時の守備の距離感、攻撃の距離感を含めて非常に良かったです。みんなが前向きに、どんどんアグレッシブにやれていた」

 今試合では守備のはめかたがひとつのテーマとしてあった上に、2試合無得点だった攻撃においてもいくつかの狙いが見えた。中盤でむやみに短いパスを繋ぐのではなく、アグレッシブに前へボールを運びながらコンビネーションしていたのだ。その中心にいたのが香川で、ボールに絡むシーンはもちろん、ボールを持っていないオフ・ザ・ボールの状況でもサイドからのクロスに対して必ずペナルティエリア内に飛び出すなど、チーム全体の攻撃のベクトルをしっかりと導いていた。

 香川の調子を示すバロメーターとなるのがボールタッチとオフ・ザ・ボール時のフリーランだ。それが高いレベルで発揮できれば調子が良い証拠であり、攻撃のイメージもハイレベルに高まっていく。今回のパラグアイ戦でそれが象徴的に発揮されたのが、51分の乾貴士(ベティス/スペイン)による1点目のゴールシーンだった。

 ボランチの山口蛍(セレッソ大阪)からボールを受けた昌子源(鹿島アントラーズ)がパラグアイディフェンスの下がり具合を見ながら相手陣内にボールを運ぶと、前方の相手守備ブロックの間にポジションを取る香川にグラウンダーの縦パスを付ける。すると香川はワンタッチでボールの角度を変えて左の乾にパスを通し、右前方に一度進み出てから左斜めに進行方向を変え、中央へボールを持ち出す乾と交差して左外に走り込んだ。この動きによって相手ディフェンスのひとりが香川のマークに付かされたことに加え、ペナルティエリア内に構えていたセンターバックも一瞬、香川に注意を引き付けられた。ゴール右に巻く乾のシュートは見事だったが、香川のボールタッチとフリーランでのアシストが光ったシーンだ。

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光った香川と乾のコンビネーション