「かつてはバードウォッチングの先に撮影があったのですが、デジタルカメラが普及したことや、団塊世代の定年退職者が急に野鳥撮影を始めるようになったことで撮影人口が急増しました。バードウォッチャーは鳥のことを考えてむちゃな撮影をする人は少なかったんですけど、そうでない人は鳥よりもいい写真を優先するのです」

 それが度を越して、法律やマナー違反が絶えないという。

「法律面では、鳥獣保護法や自然公園法、自治体の公園条例などの法律・法令違反や、私有地の不法侵入や駐車違反などです。マナー違反は、巣に近づかない、餌付けはしないといった鳥に対するものと、三脚が通行の妨げになるといった人に対するものがあります」

 特に営巣中の写真は問題が多いという。巣があるところでは確実に野鳥が撮影でき、ヒナに餌をやる様子も見ることができる。しかし、人が多く集まることで鳥が巣を放棄してしまうこともある。

 日本野鳥の会は毎年、「ワイルドバード・カレンダー」の写真コンテストを実施しているが、巣やヒナ、営巣中など繁殖行動に影響を与えたと思われる写真や、巣立ち後間もない親子の写真は採用しないことを明記。餌付けや自然に手を加える行為も禁じており、これらへの同意がないと写真を受け付けていない。

「4、5年前から応募が急増しています。やらせなどの不自然な状態で撮影されたものや、鳥が緊張している状態かどうかは見ればわかりますので、そうした写真は選考前に除外しています」

 他の団体が主催した自然写真コンテストの作品でも、巣やヒナの写真など野鳥の生態に影響を与えていると思われる写真があれば、主催者に申し入れを行うこともある。

「写真コンテストの審査員が選考する前に、生態に影響がない写真なのか、マナー違反ではないか、発表することによって悪い波及効果がないかといったチェックを行う流れを作りたいと思っています」

 多くの人の目に触れるコンテストや写真集などでマナー違反の写真の露出を減らすことで、悪質な撮影トラブルが収まることを期待している。

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