日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、乳児に湿疹ができたときのステロイド治療について、自身も1児の母である森田麻里子医師が「医見」します。
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赤ちゃんが生まれてしばらくすると、多くなってくる悩みが「乳児湿疹」です。
乳児湿疹というのは赤ちゃんの湿疹の総称で、生後1カ月頃の湿疹は、ほとんどが新生児ニキビか脂漏性湿疹と言われています。1998年から99年にかけてオーストラリアで行われた研究では、3カ月未満の子ども46人を調べたところ、71.7%に脂漏性湿疹があるという結果が出ています(1)。かなりの割合ですよね。
しかし、1歳台の子ども176人の中で脂漏性湿疹があるのは7.5%だったことがわかっています。成長とともに、数週間から数カ月で改善する場合が多いのです。
ネットには、便秘が乳児湿疹の原因とする記事もありますが、明確な根拠はないようです。確かに、腸内細菌叢がアレルギーに関係しているという意見はあり、乳酸菌を摂取することで、アトピー性皮膚炎や便秘が改善するかを確かめた研究はいくつかあります。しかしアトピー性皮膚炎は乳児の湿疹のごく一部ですし、乳酸菌の効果もはっきりしていません。お腹の調子が良いに越したことはありませんが、便秘を治せば湿疹が治るとは限りません。治療には、適切なスキンケアが大切です。
脂漏性湿疹では、おでこに黄色い皮脂の塊ができたり、頬に赤い発疹が出たりしますが、他にも乾燥による湿疹やあせも、アトピー性皮膚炎、かぶれなど他の病気も考えられます。まず、小児科や皮膚科の医師にきちんと診断してもらいましょう。たいていの場合、赤ちゃんは元気で痒みは強くなく、ミルクを飲んだり眠ったりするのに支障はありません。軽症なら、スキンケアだけでよくなる場合もあります。黄色いカスは、白色ワセリンやベビーオイルを塗って柔らかくした後に、柔らかい歯ブラシや目の細かいクシで優しく取り除きます。その後、ベビーソープでよく洗い、保湿剤を塗ってあげましょう。