立ち上がりの失点を振り返ると、左のスローインを簡単に失ったところからショートカウンターを受け、ボール保持者のファンマに4人が行ってしまい、ぽっかり空いたところに侵入した中村慶太に合わされる形で失点した。名古屋のディフェンスは基本ゾーン気味にポジションを取りながらボールにチャレンジしていくスタイルだが、それ自体が崩されて失点するケースは実はそれほどない。

 とにかくボールを失う位置の悪さと、そうした危機的な状況で位置に関係なく、同じチャレンジの守備をすることで危険なフィニッシャーを捕まえられずに失点している。それもオーストラリア代表の守護神ランゲラックに救われるシーンがかなりありながら、その悪循環を断ち切れていない状況だ。その多くの場合は自陣で狭くボールをつなごうとしたところをカットされている。

 川崎フロンターレを率いていた時代から風間監督の基本哲学は変わっていない。ボールを持っている選手と受ける選手の関係で相手を外せれば、ボールを持っている側が常に優位に立てるという考えだ。しかし、そこで相手を上回れていない以上、特にビルドアップの段階ではシンプルに、広くピッチを使って前にボールを運ぶ選択肢も活用していく必要がある。

 皮肉なことに、名古屋が流れの中から作っている大きなチャンスは前線のジョーに長めのクサビを入れ、そこからシャビエルや2列目の選手が前を向いてボールを持てたところから生まれている。そうしたシンプルな展開を最もできていたのが開幕の2試合だった。

 欧州トップリーグのパスサッカーを基調とするチームですら、相手の前からのプレッシャーが厳しくなる傾向の中で、自陣からの組み立ての段階ではシンプルに幅を使って縦にボールを運ぶ方式を取り入れている。高い位置で起点ができた局面では、例えばFC東京戦の前半にジョーと青木亮太のコンビネーションから青木が惜しいシュートを放ったようなシーンも作れている。とにかく、そうした局面に持っていくまでが窮屈すぎる状況だ。

 川崎では5年をかけてタイトル争いできるチームを作り上げたが、名古屋ではまだ2年目。しかもJ2でスタートして、プレーオフで何とかJ1に昇格した身分にすぎない。指揮官のコンセプトそのものに根本的な問題があるのであれば、そこを代えるしかないが、簡単にいかないことは多くの人が予想できていたはず。

 ただ、あまりに敗戦が続いてしまった。約3分の1を経過した段階で最下位、すでに残留圏との勝ち点差は5。普通ならとっくに解任されておかしくない状況であることは確かだ。20日の柏レイソル戦でW杯による中断期間に入る。指揮官が“てこ入れ”をするには絶好のタイミングだが、一方でフロントが最も決断しやすいタイミングでもある。そう意味でも、奇しくも監督を交代したばかりの柏戦が命運を握る試合になるかもしれない。(文・河治良幸)

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